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発達障害とは?種類や特徴、生活や仕事での困りごとをわかりやすく解説

発達障害は、生まれつき持っている「脳の個性」です。(※)人によりその特徴の出方は千差万別ですが、一般的には以下の代表的な3つの診断に分類されています。

  • ASD(自閉スペクトラム症)
  • ADHD(注意欠如多動症)
  • LD(学習障害)

自分に発達障害があるかどうかは、発達障害者支援センターや精神科などの医療機関で検査することができます。発達障害と診断されると、以下のような公的サポートを受けることができます。

・障害者手帳…一定の障害がある方に発行される手帳、経済的な支援を受けられたり、障害者雇用の際に利用します
・障害者年金…障害によって生活や仕事が制限される場合に受け取れる年金
・障害者雇用…障害者をもつ方が、一人ひとりの特性に応じて活躍するための雇用対策

この記事では、発達障害の種類や症状、相談できる窓口について解説しています。
記事の最後では、発達障害や特性のある方への求人サービスも紹介しているので、最後まで読んでみてください。

参考書籍:発達障害大全 ― 「脳の個性」について知りたいことすべて

発達障害とは

発達障害は、先述したとおり「生まれつき持っている脳の個性・特性」と昨今では定義されています。
米国精神医学会(APA)による精神疾患の診断分類「DSM」などでも「神経発達症」として診断基準が列挙されていますが、診断基準に当てはまるからといって発達障害と診断されるわけではありません。
「本人や家族が困難や障害を感じているか」が最も重要な判断基準となっています。

発達障害による個性・特性は人によって大きく異なります。例えば以下のようなものがあります。

  • 学習面で難しさを感じる
  • コミュニケーションが苦手
  • ものごとの一部分にこだわりをもつ など

生まれつきの脳機能の発達にばらつきがあるため、社会生活で生きづらさを感じる人は、医師の診断を受けることで様々な公的支援を受けやすくなったり、周囲のサポートを得やすくなります。
一人ひとり症状や特性が違うので、もし今の環境に生きづらさを感じる場合は、自分に合った配慮を受けられる環境を整えることが大切です。

発達障害の種類一覧

発達障害の種類は様々ですが、ここでは代表的な3つの種類を中心に解説しています。

  • ADHD(注意欠如多動症)
  • ASD(自閉スペクトラム症)
  • LD(学習障害)

それぞれ特性は異なりますが、ひとりの中に複数の特性が共存するケースもあります。

ADHD(注意欠如多動症)

ADHDは、「注意欠如多動症」という名の通り、注意・集中力の欠如、多動、衝動性が見られる疾患です。
ADHDの特性は大きくわけて以下の3つに分類されます。

■不注意優勢型
いわゆる「うっかり」間違いが多いタイプです。
忘れ物をしたり、約束を忘れてしまうということは、誰しも経験があると思います。
しかし、ADHD の方の場合、うっかりの度合いが大きかったり、頻度が高かったりします。
気がそれやすく、物事に長時間集中し続けることの苦手さがある場合もあります。また、整理整頓が苦手な人もいます。

■多動・衝動優位型
ひとつの物事にじっくり取り組んだり、ひとつの場所にじっと留まることを好みません。
つい貧乏ゆすりをしてしまったり、じっとしていても内心は落ち着かないことが多くあります。
気持ちのコントロールが効きにくい場合があり、カッとなって言い返してしまったり、後先考えずに思ったことを伝えてしまうことがあります。
じっくり計画を立てて行動するよりも、思いついたら即行動という場合が多いでしょう。

■混合型
「不注意」と「多動 / 衝動性」の両方の特徴を持つ場合です。

不注意優勢型と多動・衝動型は、人によって表れ方に違いがあります。

ADHD(注意欠如多動症)は12歳以前から特性が見られることが多いようですが、大人になってから診断されるケースもあります。
ADHDの不注意や衝動性は薬物療法で改善される場合もありますので、最寄りのクリニックで相談することをおすすめします。

「DSM-5-TR」によるADHDの診断基準は以下のとおりです。

  • 「不注意(活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めないなど)」と「多動-衝動性(じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人のじゃまをしてしまうなど)」が同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に強く認められること
  • 症状のいくつかが12歳以前より認められること
  • 2つ以上の状況において(家庭、学校、職場、その他の活動中など)障害となっていること
  • 発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること
  • その症状が、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されないこと

引用:DSM-5TR

ASD(自閉スペクトラム症) 

ASD(自閉スペクトラム症)は、これまで「自閉症」や「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害」など、さまざまな名称で呼ばれていました。
現在は「自閉症スペクトラム症」に統一されています。

1979年にイギリスの児童精神科医ローナ・ウィングは、「ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群・広汎性発達障害など)」を含む自閉症の人が持つ特徴として「ウィングの3つ組」を提唱しました。

ASDを理解する上でこの「3つ組の障害」という視点から考えるのが分かりやすいのでご紹介しておきます。

社会性の質の違い周囲の人とかかわる時に適切にふるまうことができず、相手と関係を築いたり、築いた関係を維持していくことが難しい。
コミュニケーションの質の違い相手が言っていることや感じていることを理解したり、気づくのが難しい。また自分が言いたいことや感じていることを相手にわかりやすく伝えたり、表現するのが難しい
想像力の質の違い自分が見たり予想していた以外の出来事や成り行きを想像したり納得することが難しい。自分の興味のあることや心地よいパターンの行動に強いこだわりがあり、想定外の行動を取ることに抵抗を示す。

ASDの人は、学校や職場など社会の様々な場面で人とのコミュニケーションや関わりに難しさが生じることが多くあります。また興味や関心が狭い範囲に限られやすく、独特のこだわり行動や振る舞いが見られることもあります。

他にも五感などの感覚が人よりとても敏感に感じたり、逆にほとんど感じない分野がある人もいます。

このような特性は人によってどの特徴が強く出るか、またどの程度の強さなのかもまちまちです。全く同じタイプの人は二人といないと言ってもよいでしょう。

  • 複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的欠陥があること
  • 行動、興味、または活動の限定された反復的な様式が2つ以上あること(情動的、反復的な身体の運動や会話、固執やこだわり、極めて限定され執着する興味、感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ など)
  • 発達早期から1,2の症状が存在していること
  • 発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること
  • これらの障害が、知的能力障害(知的障害)や全般性発達遅延ではうまく説明されないこと

引用:DSM-5TR

LD/SLD(学習障害/限局性学習障害)

LD (学習障害)は「Learning Disorder」または「Learning Disability」の略で、日本語では「学習障害」と呼ばれていました。

2022年に改訂された(邦訳は2023年)アメリカ精神医学会が発行する最新の診断基準である「DSM-5-TR(精神疾患の診断・統計マニュアル)」では、LDの診断名が「SLD = ”Specific Learning Disorder” (限局性学習症)」に変更されました。

LD / SLDは、全体的な理解力などに遅れはないものの、読み書き計算などの特定分野の学習に大きな困難がある状態です。単に成績が悪いということではなく、視覚的短期記憶や聴覚的情報処理といった認知能力の凸凹が、結果として特定科目の苦手さという形であらわれます。

LD / SLDにおいて困難が生じる学習分野は「読み」「書き」「算数」の3つに大別され、それぞれ名称や特徴が異なります。ただし一般的には、「読み障害」だけ見られるということはほとんどなく、「読み」の障害がある場合は「書き」にも困難さがある状態がほとんどです。

幼児期に言語の遅れ、文字を書く際の動きに困難が認められることもありますが、多くは就学期に診断を受けます。

DSM-5では、以下の症状のうち少なくとも1つが存在すること、としている。(1)(2)が読字障害、(3)(4)が書字表出障害、(5)(6)が算数障害であり、複数の症状がある場合は併記する。
(1)不的確又は速度が遅く、努力を要する読字。
(2)読んでいるものの意味を理解することの困難さ。
(3)綴字の困難さ。
(4)書字表出(文章を書くこと)の困難さ。
(5)数字の概念、数値、計算を習得することの困難さ。
(6)数学的概論(問題を解くために数学的な概念・事実・方法を適用すること)の困難さ。

引用:一般社団法人日本LD学会「​LD等の用語解説」

その他の発達障害

ここでは、その他の発達障害について紹介します。

名称概要
吃音[症]なめらかに話すのが難しい状態
発症は幼児期からが多いが、思春期以降に目立ってくるケースもある
【症状の例】※1
話し始めでつまる
単語の一部を伸ばす
単音・単語の一部を反復する
トゥレット症候群複数の運動チックと1つ以上の音声チックが1年以上続く状態
【運動チックの例】※2
まばたき
首を振る
飛び跳ねる
顔をしかめる
【音声チックの例】※2
咳をする
鼻を鳴らす
咳ばらいをする
奇声・不適切な言葉を発する
チックは突発的で、反復的、非律動的な動きや発声として現れる
発達性協調運動障害(DCD)身体の動きをコントロールしづらく、異なる部分を一緒に動かく協調運動が難しい
【協調運動の例】※3
手で縄を回しながらジャンプする
洋服のボタンをボタン穴に通す
飛んでくるボールを見てキャッチする
選択性緘黙(場面緘黙)学校や職場など、特定の場面・状況で話せなくなる
【症状の例】※4
緊張しやすい
家族以外と話せない
話しかけられても答えられない

引用元
※1 発達障害情報・支援センター「吃音[症]とは」
※2 発達障害情報・支援センター「トゥレット症候群とは」
※3 ティーンズ「【図表でわかる!】発達性協調運動障害(DCD)って なに? | どんな困りごとがあるの?対応方法は?」 
※4 かんもくネット「子ども支援用 場面緘黙リーフレット「子どもに関わるみなさんへ」

大人の発達障害の症状・特性と困りごと

ここでは、大人の発達障害について解説します。
具体的な症状や困りごとなど、体験談を交えて紹介しますので、参考にしてみてください。

ADHD(注意欠如多動症)の症状・特性と困りごと

代表的なADHDの症状には以下のようなものが挙げられます。

注意力が低い・忘れ物が多い
・整理整頓が苦手
・物音や人の声が気になって集中できない
落ち着きがない・じっとしているのが苦手
・そわそわと手や足を触ったり組んだりする
よく考えずに行動する・考えるよりも先に動く
・順番を待つのが苦手
・相手を待たずに発言する

参考:鈴木慶太 (著)「親子で理解する発達障害 進学・就労準備の進め方」

生活・仕事での困りごと体験談

小学校のころから忘れ物や、物をなくしてしまうことが多く、よく担任の先生に叱られていました。また、気性が激しいところが目立ち、先生に反発したり、友達とよくケンカしていましたね。
中学生のころからは、徐々に周囲とのトラブルは少なくなり、友達も多く充実した学生生活でしたが、勉強のほうは計画性のなさや、ケアレスミスの多さが目立ち、苦労しました。
大人になってからは、業務中の集中力を維持することに苦労しています。特にデスクワークで、データ入力やチェック作業などの単純作業を続けていると、いつの間にかウトウトしていて周囲から注意されたり、何度もチェックしたはずなのに入力ミスを頻発したりと、同僚や上司に迷惑をかけてしまうことがしばしばあります。
そのようなこともあり、仕事が長続きしづらく、転々とした職歴になってしまいました。(35歳 女性)

ASD(自閉スペクトラム症)の症状・特性と困りごと

ASDには以下のような症状があります。

人との関わりが苦手・自己主張が強い
・人と目を合わせない
・状況に合わせた行動が苦手
・名前を呼ばれても反応しない
コミュニケーションがうまくとれない・言葉の発達に遅れがある
・例え話を理解するのが苦手
・相手の言葉をオウム返しする
・相手の表情から気持ちを読み取るのが苦手
想像力が乏しい・こだわり行動がある・同じ行動を繰り返す
・相手の言葉をそのまま受け取る
・決まった順序や道順にこだわる
・急な予定変更があるとパニックになる

引用元:鈴木慶太 (著)「親子で理解する発達障害 進学・就労準備の進め方」

生活・仕事での困りごと体験談

自分では覚えていなくて、おとなになってから親から聞いたのですが、幼稚園の時点で集団生活になじめず、一人でいることが多かったようです。
比較的成績が良かったこともあり、中学・高校・大学と特別な支援を受けることなく育っていたのですが、就職活動の際の困りごとが発達障害を自覚する最初のきっかけになりました。エントリーシートの志望動機や自己PRを書くことに困難を感じたり、採用面接の際に想定していない質問がでると言葉が出にくかったりと、大変苦労した記憶があります。
なんとか就職することはできたのですが、仕事でも臨機応変な対応ができずパニックになってしまったり、どのタイミングで誰に聞いていいかわからず誰にも相談することができずミスを連発してしまい、職場の上司から一度医師に診てもらうように言われて、自閉スペクトラム症の診断につながりました。(25歳 男性)

LD/SLD(学習障害/限局性学習障害)の症状・特性と困りごと

LDは、6つの能力いずれかに障害がある状態を指します。

聞く力・書き取りが苦手
・聞き取りが難しい
・長い話に集中できない
話す力・筋道を立てて話すのが難しい
・会話の中に余分な内容が入る
・話が結論までたどり着きにくい
・「文章」として話すのが難しい
読む力・読むスピードが遅い
・文字の発音がしづらい
・単語を読み間違えやすい
・音読できるが意味を理解しづらい
書く力・文字を間違える
・文法の誤りが多い
・漢字の部首を間違える
・単語を書くのが難しい
計算する力・暗算ができない
・数字の位取りが理解しづらい
・九九を計算に使うのが難しい
・繰り上がりや繰り下がりが理解しづらい
推論する力・長文読解しづらい
・因果関係の説明が難しい
・算数の応用問題や図形問題が苦手
・直接示されていないことを推測するのが苦手

引用元:鈴木慶太 (著)「親子で理解する発達障害 進学・就労準備の進め方」

生活・仕事での困りごと体験談

書字障害があり、手書きで文字を書くことが困難です。小中学校で筆記テストを受ける際には周囲と比べて時間がかかるので、テスト時間を通常より長くしてもらうなどの配慮を受けていました。
飲食店でアルバイトをしているのですが、教えられたことをメモに取ることが出来ず苦労しました。あまりにも仕事を覚えることが難しかったので、やむにやまれず周囲に障害があることを伝えました。店長の理解を得て業務を教えてもらう際にはボイスレコーダーをつかって録音したり、スマホを使ってメモを取ることを許可していただけたので、その後はずいぶん働きやすくなりました。(22歳 女性)

発達障害かも?と思ったとき検査・診断・相談先一覧

「発達障害の特性に当てはまっている」「自分の発達障害なのでは…?」と感じたら、まずは信頼できる機関で検査を受けてみましょう。
ここでは、以下の機関や相談先について説明します。

  • 発達障害者支援センター
  • 精神科・心療内科・メンタルクリニック
  • Kaien心理検査特急便

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは、都道府県・指定都市、都道府県知事等が指定した社会福祉法人、特定非営利活動法人などが運営しています。
発達相談支援センターには大きく4つの事業があります。

相談支援・本人・家族・関係機関からの相談対応
・必要に応じた福祉制度との連携
・医療福祉・教育・就労など関係機関の紹介
発達支援・発達検査
・支援計画の作成
・発達支援についての相談対応
・家庭での療育方法に関する助言
就労支援・発達障害をもつ方の就労に関する相談対応
・学校や職場に対し特性や仕事への適性に関する助言
普及啓発・研修・地域住民への講演会
・発達障害に関する広報活動
・関係機関の職員・行政職員への研修

発達障害者支援センターの支援内容には地域性が関わるため、お住いの地域のセンターに問い合わせてみましょう。

精神科・心療内科・メンタルクリニック 

精神科・心療内科・メンタルクリニックでも、発達障害の診断を受け入れている場合があります。
お近くの精神科・診療内科・メンタルクリニックの公式サイトで、発達障害の診断に対応しているかチェックしてみましょう。
以下に、医療機関で発達障害を診断する流れをまとめました。

  1. 住んでいる地域で「精神科 発達障害 診断」「心療内科 発達障害 診断」とウェブ検索する
  2. 検索結果ででてきた医療機関が発達障害の診断に対応しているか、電話やメール、問い合わせフォームなどから確認する
  3. 発達障害の診断に対応していれば、実際に問い合わせて予約を取る
  4. 問診を受ける
  5. 「WAIS検査」を受ける必要がある場合は検査を受信する
    • 病院に公認心理士を呼びWAIS検査を受ける
    • 他の検査機関でWAIS検査を受ける

「WAIS(ウェイス)検査」とは、ウェクスラー式知能検査の成人版です。知的障害の診断や、発達障害の診断で用いられています。

関連記事:知能検査とは? 大人の知能検査 WAIS-Ⅳ を読み解く

Kaien心理検査特急便

発達障害の検査を受けるには、以下の選択肢を検討する方が多いでしょう。。

  • 発達障害者支援センター
  • 精神科・心療内科・メンタルクリニック

しかし、発達障害の検査の予約が数ヶ月先まで埋まっているケースが多いです。さらに発達障害の診断結果がわかるまでに数ヶ月かかるケースがあります。

発達障害の診断検査をなるべく早く受けたい、発達障害の診断結果を早く知りたい方に向けて、Kaienでは「心理検査特急便」というサービスを提供しています。

受検料40,000円(税込)
来所回数1~2回
入所1回の所要時間1~2時間/回
検査結果のお届け約1週間後

Kaien心理検査特急便なら、1週間ほどで結果をお届けできるので、お急ぎの方はご検討ください。

大人が発達障害の診断されたときに知っておきたいこと

大人の発達障害と診断されたときに、就労に関して知っておきたい制度は以下の3つです。

  • 障害者手帳を申請するべきか?
  • 障害年金を申請するべきか?
  • 障害者枠で働くべきか?

障害者手帳を申請するべきか?

障害者手帳とは、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種の手帳を総称した一般的な呼び方です。障害者手帳を所持していることで、障害者総合支援法の対象となり、様々な支援・サービスを受けられます。

参考:障害者手帳について|厚生労働省

障害者手帳を申請するか迷った際は、まずは先述した相談・支援先に相談するのがおすすめです。
他にも、発達障害者向けに就労支援を行っているKaienが実施している「障害者手帳を取得するべきか?」のチェックリストを利用してみても良いでしょう。

簡易診断 支援編①「障害者手帳」 発達障害・グレーゾーンの方向けの簡易診断

例えば、以下の項目で「当てはまる」項目が多い場合は、障害者手帳の申請を検討してみましょう。

  • 医療機関(心療内科・精神科系)に通っているか
  • 税の軽減を受けたいか
  • 各種料金の値引きを受けたいか
  • 障害者雇用で働きたいか
  • 現在の仕事はフルタイムか
  • 日常生活が自分一人で問題なく生活できるか

障害年金を申請するべきか?

障害年金は、病気や怪我で日常生活や仕事に支障が出る方に対し、国から支給される年金制度です。
発達障害の方も申請が可能ですが、障害年金を受給するための要件を満たす必要があります。
初診日や保険料の納付状況、障害認定日や等級によって、受給できるかが決まります。

■障害年金の受給するための要件

障害基礎年金障害厚生年金
障害の原因となった病気やけがの初診日が次のいずれかの間にあること。
1.国民年金加入期間
2.20歳前または日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満の方で年金制度に加入していない期間
厚生年金保険の被保険者である間に、障害の原因となった病気やけがの初診日があること。
初診日の前日において、保険料の納付要件を満たしている
※20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件は不要
初診日の前日において、保険料の納付要件を満たしていること。
障害の状態が、障害認定日または20歳に達したときに、障害等級1級または2級に該当していること。障害の状態が、障害認定日に、障害等級表に定める1級から3級のいずれ かに該当していること。

引用元:日本年金機構「障害年金ガイド」令和6年度版

障害年金を申請するべきかどうかは、簡易的なチェックで診断できます。
大まかなチェック項目は以下のとおりです。

  • 現在フルタイムで働いているか
  • 初診を受けたのはいつか
  • 日常生活(食事やトイレ)は困難か
  • 社会に出て働くのは困難か
  • 障害者手帳は持っているか
  • どの障害者手帳を持っているか

詳しくは簡易診断 支援編②「障害年金」をご覧ください。
発達障害の場合、特性によってどの程度生活に支障が出ているかで受給できるかが決まります。
もし判断しづらければ、相談できる窓口で問い合わせてみましょう。

関連記事:「発達障害と障害年金」

障害者枠で働くべきか?

発達障害と診断されたとき、働き方について迷う人も多いのではないでしょうか。
診断後の働き方は、以下の3つが考えられます。

  • 発達障害を職場に開示せずに働くクローズ就労
  • 発達障害を職場に開示するオープン就労
  • 障害者枠で働く

まず、チェックリストで障害者雇用枠の仕事が向いているか?を確認してみましょう。
この記事では、発達障害の就労支援を行っているKaienの適職診断⑥「障害者雇用」のチェックリストを紹介しています。

  • 障害者手帳を持っているか
  • 最低給与レベルはいくらか
  • 一日の就業時間はどれくらいか
  • どのような仕事に就きたいか
  • 居住地はどこか
  • 精神科系のお薬は服用しているか
  • 正社員で働いた経験はあるか
  • メンタルの強さはどの程度か
  • 家族の理解はあるか

自身にあった働き方を考える際の参考にしてみてください。

発達障害や仕事で困ったときに相談できる窓口はあるか? 

発達障害の方が相談できる窓口はたくさんあります。
以下に特徴をまとめました。

相談窓口名サービスの特徴設置されている地域対象年齢公式サイトURL
発達障害者支援センターハローワークなどの就労支援機関と連携して就労支援をおこなう。発達障害をもつ本人・家族からの相談に応じ、適職や問題点について具体的にアドバイスしてくれる。すべての都道府県・政令都市http://www.rehab.go.jp/ddis/action/center/
障害者就業・生活支援センター障害をもつ方に対し、安定して働けるようサポートを提供する。雇用・保健・福祉・教育などの関係機関と連携し、障害のある方が安心して働ける環境を整えることを目的としている。337ヶ所(令和6年4月1日時点)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18012.html
地域障害者職業センター一人ひとりのニーズに沿った職業リハビリテーションをおこない、安定した雇用につながるよう支援する。ジョブコーチ(※1)が、職場でのコミュニケーションや業務の遂行についての助言をおこなう。すべての都道府県https://www.jeed.go.jp/location/chiiki/
ハローワーク発達障害の特性に応じた職業相談をおこなう。福祉・教育機関と連携し、就職の準備から職場定着までを支援するすべての都道府県https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/hellowork.html
地域若者サポートステーション厚生労働省委託の支援機関。現在働いていない方や、就学中ではない方を対象とし、コミュニケーション講座や職場体験、就活セミナーなどをおこなう。全国177ヶ所15歳から49歳https://saposute-net.mhlw.go.jp/
就労移行支援通所型の障害福祉サービス。働くためのスキルを身につけるトレーニングや、就職活動のサポートを提供する3,301ヶ所(令和2年10月時点)18歳から64歳参考: https://www.kaien-lab.com/

※1 ジョブコーチ(職場適応援助者支援事業)とは、障害者の職場適応に課題がある場合に、職場に出向いて障害特性にあわせた専門的な支援を行う支援者です。

上記で紹介した窓口では、発達障害に関する不安・困りごとを気軽に相談でき、公的な支援についても詳しく教えてもらえます。
障害者雇用の就労に関しても、細やかなサポートを受けられるので問い合わせてみると良いでしょう。

就労移行支援事業所を運営している会社の一つであるKaienは、発達障害者の強みを活かした仕事に就くサポートを行っている会社です。豊富な就労移行支援プログラムによりあなたが働きやすい職場や環境に出会うサポートをしています。

発達障害に関するよくある質問Q&A

ここでは、発達障害についてよくある質問にお答えします。

  • 発達障害と広汎性発達障害の違いは?
  • 発達障害のグレーゾーンとは?
  • 発達障害の二次障害とは?

ひとつずつ回答します。

発達障害と広汎性発達障害の違いは?

発達障害とは、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、LD(学習障害)などの、先天的な脳機能の発達に関係する障害の総称です。一方、広汎性発達障害は、ASD(自閉症スペクトラム症)の古い呼び名の一つと考えておくとよいでしょう。

アメリカ精神医学会が発行する分類および診断ツールである『精神障害の診断と統計マニュアル』(DSM)は、これまで医学の進歩や研究成果を反映し、改版を重ねています。その中で発達障害の定義や診断名にも変化が見られています。

なお、総称である「発達障害」という呼び名も、DSMが2022年に「DSM-5-TR」に改訂されて以降は「神経発達症」が使われています。なお、神経発達症は厳密には発達障害よりも広い範囲を指すものですが、ここではこれらを併記しています。

DSM-5に基づきKaienが作成した神経発達症の分類表

出典:DSM-5に基づきKaienが作成

発達障害のグレーゾーンとは?

発達障害のグレーゾーンは「発達障害の特性があるものの、診断基準を完全に満たしていない状態です。

■発達障害のグレーゾーンの例

  • 物事を順序通りに進めるのが苦手だが深刻な影響はない
  • 集中力が持続しにくいが、学業や仕事で大きな問題がない
  • 音や光に対する感覚過敏があるが生活に支障をきたしていない

発達障害のグレーゾーンは、特性に対して本人に自覚がないケースや、周りに理解されにくく、適切な支援を受けられない場合もあります。

しかし、発達障害者支援法では、グレーゾーンであっても相談したり診断を受けたりできる旨が記載されています。

市町村は、児童に発達障害の疑いがある場合には、適切に支援を行うため、当該児童の保護者に対し、継続的な相談、情報の提供及び助言を行うよう努めるとともに、必要に応じ、当該児童が早期に医学的又は心理学的判定を受けることができるよう、当該児童の保護者に対し、第十四条第一項の発達障害者支援センター、第十九条の規定により都道府県が確保した医療機関その他の機関(次条第一項において「センター等」という。)を紹介し、又は助言を行うものとする。

引用元:発達障害者支援法第五条第三項

発達障害の二次障害とは? 

発達障害の二次障害とは、発達障害が起因となる精神障害です。発達障害の特性による生きづらさから生まれるストレスや失敗体験の結果、メンタル不調や問題行動が起こってしまうことを言います。二次障害は「内在化障害」「外在化障害」に分けられ、具体的には以下のような例が挙げられます。

内在化障害心身症、依存症、抑うつ、対人恐怖、不安障害、強迫性障害、引きこもりなど
外在化障害暴力、暴言、家出、自傷行為、反社会的行動、感情不安定、他者への攻撃的な態度など

関連記事:発達障害の二次障害とは?症状と種類、予防法や支援機関を解説

発達障害があっても、二次障害が必ず起こるとは限りません。
周囲の理解とサポートがあれば、二次障害を防ぐことができるでしょう。

まとめ

この記事では発達障害について解説しました。

  • 発達障害の症状の出方は、人によって千差万別である
  • 発達障害の診断があって今の環境に生きづらさを感じている場合は、自分にあった配慮を受けられる環境を整えることが解決の糸口になる
  • 発達障害の診断をうけた際に、新しい働き方の選択肢として「障害者雇用枠」を検討できる(※障害者手帳の取得は必須)

今の環境に生きづらさや困り感を感じていて、この記事を読んで共感することが多い場合は、発達障害の診断も視野にいれてみてはいかがでしょうか。

発達障害がある人に向けた相談窓口は全国に設置されており、サポート内容もさまざまです。生活の困りごとや、就労の悩みなど様々なことが相談ができます。

この記事を発信している「マイナーリーグ」は、発達障害がある方が個々の特性を活かせる求人を多数掲載している求人サイトです。

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著者プロフィール 大野順平

株式会社Kaien
就労支援事業部 法人サービス担当
ゼネラルマネージャー / シニアディレクター
2014年Kaienに入社。これまで30社以上の精神・発達障害人材の雇用推進プロジェクトに参画。

論文寄稿:月刊精神科「就労支援におけるneurodiversity」(2023年9月,科学評論社)
取材対応:朝日新聞「発達障害は「わがまま」? 働く場の合理的配慮?」特集
NHK クローズアップ現代+「企業が注目!発達障害 能力引き出す職場改革」 他多数
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