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精神障害とは?種類・症状や支援についてわかりやすく解説

精神障害とは?種類・症状や支援についてわかりやすく解説

精神障害(精神疾患)は、脳の機能や構造の変化によって心に影響が出る状態及び疾患を指します。精神障害の種類は、統合失調症、うつ病、不安障害などが挙げられます。
厚生労働省による2017年の調査によると、精神疾患の患者数は全国で約419.3万人となっており、年々増加傾向です。(参考:精神疾患を有する総患者数の推移 )

症状や疾患によって治療法はさまざまで、薬物療法や精神療法、リハビリテーションなど多岐に渡ります。
精神障害の診断内容によっては、「精神障害者保健福祉手帳」や「障害年金」などの制度を利用して、さまざまな生活上のサポートを受けられます。

この記事では、精神障害・精神疾患について以下の内容を解説しています。

  • 精神障害の概要
  • 精神障害の種類と症状
  • 精神障害(精神疾患)と診断されたときの相談先

記事の最後では、精神障害・発達障害のある人におすすめの求人サービスを紹介しているので、最後まで読んでみてください。

精神障害(精神疾患)とは 

精神障害とは、著しい苦しみや機能障害をもたらし、生活や仕事に支障をきたす異常な気分、思考、行動を特徴とする疾患です。(※ひと目でわかる 心のしくみとはたらき図鑑」より

精神障害の定義は、それぞれ以下のように記載されています。

【精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)】
「精神障害者」とは、統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害その他の精神疾患を有する者をいう。
引用元:精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)第五条

【医学書の定義】
「精神疾患とは,精神機能の基盤となる心理学的,生物学的,または発達過程の機能障害によってもたらされた,個人の認知,情動制御,または行動における臨床的に意味のある障害によって特徴づけられる障害群である」
引用元:DSM-5と精神医学的診察についての私見(ジェイムズ・モリソン) | 2016年 | 記事一覧

精神障害(精神疾患)は4人に1人が一生のうちに一度は患う可能性があると言われているため、誰にでも起こりうる可能性があるといっても過言ではありません。
個人によって精神障害の症状の程度は異なります。精神障害が複数混在して発症するケースも少なくありません。そのため、個人の症状にあったサポートや周囲の理解、環境づくりが非常に大切です。

参考:
書籍「ひと目でわかる 心のしくみとはたらき図鑑
MSDマニュアル「精神障害の概要
関連記事:精神疾患とは?精神障害との違いや種類・特性、利用できる支援制度を解説

精神障害(精神疾患)の種類と症状一覧 

精神疾患は、主に以下のような診断カテゴリーによって分類されています。

  • 気分障害(躁うつ病、うつ病、躁病)
  • 不安症(全般性不安症、社交不安症、広場恐怖症、パニック症など)
  • 強迫症(ため込み症、抜毛症もふくむ)
  • 統合失調症
  • 神経症・ストレス関連障害
  • 認知症
  • パーソナリティ障害
  • 依存症
  • 高次脳機能障害
  • てんかん
  • 発達障害
  • 器質性精神障害

ここからは、精神疾患の識別・分類・体系化に主に利用している2つの書籍に基づいて、精神障害・疾患の概要について説明していきます。

  • 世界保健期間(WHO)の国際疾病分類(ICD-11)
  • アメリカ精神医学会による精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5-TR)

同じ疾患でも、程度や症状の表れ方は人によって異なります。ここでの解説は、概要的な情報として参考にしてみてください。

気分障害(躁うつ病、うつ病)

気分障害とは、うつ病と躁うつ病の両方を示す感情的な障害のことです。気分障害は感情障害ともいわれます。

うつ病は、興味や喜びがなくなり、うつ気分が続く「抑うつ障害」のひとつです。医学的には「大うつ病」ともいわれます。
躁うつ病は、気分が高揚し、エネルギーに満ち溢れ、高揚感があふれる状態です。
うつ病と躁うつ病は、気分障害の両極にある状態です。

病名症状
双極性障害
(躁うつ病)
気分が高揚した躁状態と、落ち込むうつ状態および混合状態が不定期におこる。症状が継続する周期は数ヶ月から数年と、個人差がある。
うつ病長い間憂うつ感が続く。何に対しても意欲がわかず、不眠や食欲不振などの症状が表れ生活に支障が出る。

関連記事:精神疾患とは?精神障害との違いや種類・特性、利用できる支援制度を解説

うつ病の診断は、少なくとも2週間に渡って、ほとんど毎日のように以下の症状のうち、5つ以上ある場合に診断されます。

  • 抑うつ気分、または悲しみ
  • これまで楽しめていた活動における興味または喜びの減退
  • 突然に起こる体重増加、体重減少、または食欲の変化
  • 不眠(眠ることが困難)、または過眠(寝すぎること)
  • 落ち着かず不安にかられている(うろうろと動きまわったり、手を揉んだりする)、もしくは会話の動きが遅くなる
  • 疲労感や気力の減退
  • 無価値感、または不適切な罪責感
  • 集中困難や決断困難
  • 死や自殺についての反復思考、自殺の計画、または自殺企図

引用元:精神疾患・メンタルヘルスガイドブック: DSM-5から生活指針まで

不安障害(不安症)

不安障害(不安症)は、強い不安や恐怖心によって、生活に影響を及ぼす状態を指します。本人のもともとの体質、育った環境など様々な要因になることがあります。

不安障害は、以下の6つの症状にわけられますが、症状の出方は人によって異なります。症状が併発するケースも少なくありません。診断基準は、それぞれの疾患によって異なります。
精神的な症状だけでなく、動悸や息切れなどの身体的症状も見られるのが特徴です。

症状名症状
パニック障害動悸やめまい、呼吸困難などが急に表れる。
社会不安障害対人面での緊張や不安を強く感じ、生活に支障をきたす状態。
広場恐怖症パニック障害の80%以上の人が併発する関連の深い不安症です。人が大勢いる、パニック発作を起こしたときに逃げ場のないような場所でパニック発作が起きたらどうしよう、という不安が大きくなり、出かけることに困難さを感じる状態を指します。
強迫症小さなことを強く気にする「強迫観念」と、強迫観念を打ち消す行為を何度も繰り返す「強迫行為」が表れる状態。
全般性不安症半年以上の間、日常のさまざまな出来事や人間関係において強い不安を抱く状態。
特性の恐怖症ある特定のものに強い恐怖を感じる症状です。何を怖がるかは人により異なりますが、以下のような症状がよく知られています。
・高いところが不安(高所恐怖症)
・締め切った空間が不安(閉所恐怖症) など

関連記事:
不安障害の方の就職・復職・転職をサポート!仕事選びのポイントや支援機関を紹介
社会不安障害のすべてがわかる本 (健康ライブラリー イラスト版)

統合失調症(統合失調感情障害)

統合失調症とは、心や考えがまとまりづらくなってしまう障害です。
さまざまな研究からストレスをきっかけに発症する病気だということがわかってきています。
統合失調症は、統合失調症スペクトラムや、発達障害、複雑性PTSD、適応障害などに症状が似ているため、診断が難しいといわれています。

統合失調症は、急性期、消耗期、回復期と3つのステージを経て改善していきます。ステージによっての主な症状は以下の通りです。

急性期精神的な興奮が激しく、幻覚・妄想などの症状が現れる時期
消耗期急性期にエネルギーを使い切った結果、症状は鎮まったものの、元気が出ない状態となる
回復期ゆっくりと身体を休める充電期間を経て、エネルギーが戻ってくると少しずつ活動の範囲が広がり、その内容も増えてくる

参考:新版 統合失調症 病気の理解と治療法 (健康ライブラリーイラスト版)

主な症状と具体例は以下のとおりです。

幻覚実際にはないものが見える・感じる
幻聴自分への批判や命令する声が聞こえる
妄想監視されていると感じるだまされていると思い込む
感覚鈍磨感情が乏しくなり、表情に変化が見られなくなる
連合弛緩考えがまとまらない話の内容がわからず、コミュニケーションがとれなくなる

統合失調症の診断基準は以下の通りです。

1ヶ月の間に次のような症状が2つ以上ある場合、統合失調症を疑う。

  • 妄想
  • 幻覚
  • まとまりのない発語
  • ひどくまとまりのない、もしくは緊張病性の行動
  • 陰性症状

上記のうち、最初の3つの症状のうち1つが存在する必要がある。
引用元:精神疾患・メンタルヘルスガイドブック: DSM-5から生活指針まで

神経症・ストレス関連障害

神経症やストレス関連障害は、ストレスを受けた経験から発症までの時間や症状が続いた期間、ストレスの性質によって以下の3つに分けられます。

病名症状
急性ストレス障害ストレス体験後、数時間から数日以内にパニック発作や混乱などが表れ、1ヶ月以内には収束する。
外傷後ストレス障害(PTSD)ストレス体験後3ヶ月以内に発症し、1年以上症状が続くケースが多い。ストレス体験を何度も思い出し、怖い思いを繰り返す(フラッシュバック)。
適応障害肉親の死や失恋、人間関係の問題など、比較的起こりやすいストレス体験から3ヶ月以内に抑うつ状態や不安感といった症状が表れる。6ヶ月〜1年以内に収束する。

認知症

認知症とは、脳の病気や障害などの原因により、認知機能の低下に伴い日常生活に支障をきたす状態です。現在では、根治できない進行性の疾患と言われています。
認知症は、DSM-5では「神経認知障害群」というグループに分類されています。

「神経認知障害群」の中には、以下の9つの障害名が記載されています。

  • アルツハイマー症
  • 前頭側頭葉変性症
  • レビー小体症
  • 血管性疾患
  • 外傷性脳損傷
  • HIV感染
  • プリオン症
  • パーキンソン症
  • ハンチントン症

(せん妄も10番目に分類されるが、改善して消失する一時的な状態であるため、上記の9種とは異なる扱いとなっている)

認知症は、重症度によって、認知症と軽度認知障害のいずれかに分類されます。それぞれの特徴や特徴は以下で定義されています。

【認知症】

  • 1つ以上の精神機能の領域(注意、計画や意思決定能力、記憶と学習、言語、運動など)において大きな低下がある。機能低下は、本人をよく知る者、医師によって懸念される、もしくは神経心理学的検査により確認される。
  • 精神機能の大きな低下によって日常生活をこなす能力が低下もしくは障害されている。例えば、請求書を支払ったり、内服薬を飲み続けたりすることに援助が必要である。

【軽度認知障害】

  • 1つ以上の精神機能の領域(注意、計画や意思決定能力、記憶と学習、言語、運動など)において軽度の低下がある。。機能低下は、本人をよく知る者、医師によって懸念される、もしくは神経心理学的検査により確認される。
  • 精神機能の軽度の低下は、援助がなくとも日常生活で必要なこと(例えば、請求書を支払ったり、内服薬を飲み続けたりすること)をこなすことができる

引用元:精神疾患・メンタルヘルスガイドブック: DSM-5から生活指針まで

認知症の症状や程度は人によって異なります。主な症状の一例を以下にまとめました。

症状の例
記憶障害物忘れが激しくなる新しいことを覚えられなくなる
見当識障害現在の時間や場所、他人との関係などが分からなくなる
実行機能障害計画に沿って順序立てた行動が難しくなる
失行・失認・失語失行…日常的に行っていた動作が難しくなる
失認…自分と相手・物との位置関係をつかめなくなる
失語…言葉が理解しづらく、思っていることを伝えるのが困難になる
理解力・判断力の低下情報処理が遅くなる機械の操作が難しくなる

参考:
心の情報サイト「認知症」
健康長寿ネット「認知症の中核症状」
精神疾患・メンタルヘルスガイドブック: DSM-5から生活指針まで

パーソナリティ障害(パーソナリティ症候群/PD)

パーソナリティ障害とは、物事の捉え方や感じ方、行動パターンなどが周囲と違うことにより、苦痛を感じたり日常生活に支障をきたしたりする精神障害です。

パーソナリティ障害は、大きく分けてA群、B群、C群に分けられます。

【A群:奇妙/風変わり】

A群のパーソナリティ障害は、奇妙で風変わりな行動パターンを示すことが多く、他者に共感することに困難を感じる人が多いため、他者と関わる状況を恐れます。

猜疑性/妄想性パーソナリティ障害他人に強い不信感を抱く
シゾイド/スキゾイドパーソナリティ障害他人に関心がなく、社会との繋がりを避ける
統合失調型パーソナリティ障害他人と親密な関係を築くのが苦手

【B群:演技的/感情的/移り気】

B群のパーソナリティ障害は、自分の気持ちを制御することに困難を覚えやすいです。過度に感情的な人が多く、予測のつかない言動をすることがあります。

反社会性パーソナリティ障害ルールを破ったり他人を傷つけたりすることに罪悪感がない
境界性パーソナリティ障害感情が不安定で、人間関係でのトラブルが起こりやすい
演技性パーソナリティ障害他人からの注目を求めて、大げさな行動をとる
自己愛性パーソナリティ障害自己評価が高く、誉められたいという気持ちが強い

【C群:不安/恐怖】

C群のパーソナリティ障害は、思考や行動に心配や恐怖を伴うことを特徴とします。著しい不安や恐怖感に絶え間なく苦しむケースが多いです。

回避性パーソナリティ障害拒絶されたり批判されたりするのを恐れ、社会や人との繋がりを避けようとする
依存性パーソナリティ障害自分ひとりで決断できず、誰かに頼りたいと考える
強迫性パーソナリティ障害完璧や秩序へのこだわりがあり、柔軟性や効率の良さに欠ける

すべてのパーソナリティ障害に共通する特徴としては以下が挙げられています。

  • その人の属する文化から期待されるものより著しく偏った行動の様式、この様式は以下のうち2つの領域に現れる。
    • 自己、他者、および出来事を知覚し解釈する方法
    • 様々な場面で感情の持ち方や示し方。情動反応の範囲や強さを含む
    • 対人関係機能
    • その感情や行動の制御(衝動の制御)
  • その様式は、個人的および社会的状況の幅広い範囲に広がっている。
  • その様式は、顕著な心理的苦痛、社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている
  • その様式は、10代の青年期または成人早期に始まる

その行動は他の精神疾患や物質、身体疾患による影響によるものではない。

引用元:精神疾患・メンタルヘルスガイドブック: DSM-5から生活指針まで
参考記事:パーソナリティ障害とは?種類ごとの特徴や治療について解説

依存症 

依存症は、ある特定のものに依存し、「それ」がないと身体も心も苦しくなる状態を指します。
「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5-TR)」や「国際疾病分類(ICD-11)」では、診断基準に挙げられている依存対象として以下を挙げています。

  • アルコール
  • 違法薬物(覚醒剤、大麻、幻覚剤など)
  • オピオイド
  • 有機溶剤(トルエン、シンナーなど)
  • ニコチン
  • カフェイン
  • 鎮痛剤・睡眠薬・抗不安薬
  • ギャンブル
  • インターネットゲーム(DSM-5では検討段階)
  • ゲーム(ICD-11)

また、「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5-TR)」や「国際疾病分類(ICD-11)」では、取り上げられていませんが、以下のような行為の繰り返しも依存症に共通する面があると考えられています。

  • 買い物による浪費・借金
  • 過食、拒食、ダイエット
  • 自傷行為
  • 恋愛・性行為
  • 仕事・運動 など

参考:依存症がわかる本 防ぐ、回復を促すためにできること (健康ライブラリー イラスト版) 

依存症は、生活にさまざまな影響を及ぼします。

  • 仕事や学校を休むことが多くなる
  • お金を得るために手段を選ばなくなる
  • 家族や友人に嘘をついて関係が悪化する
  • 睡眠や食事を満足に摂らず、健康上の問題が生じやすい

これらの症状は、意志が弱いからではなく、脳の機能(報酬系と衝動性に関与する部分)がコントロールできないために起こります。周囲の人々や専門機関の協力を得て依存症と向き合うことで、回復の可能性が高まります。

DSM-5-TRに掲載されている診断基準は以下の通りです。

高次脳機能障害

高次脳機能障害とは、脳へのダメージが原因で認知面や行動に障害が出る状態を言います。交通事故の外傷や脳梗塞、脳出血などの疾患が高次脳機能障害のきっかけになる場合があります。
高次脳機能障害の主な症状は以下のとおりです。

記憶障害覚えていたことを思い出せない新しいことを覚えられない
注意障害集中できない
遂行機能障害臨機応変に動けない
社会的行動障害イライラしやすいこだわりが強い
病識の低下自分の状態を客観的に見られない
脳疲労ミスが増える怒りっぽくなる
半側空間無視自分の右側あるいは左側を認識できない
失認物や人を正しく認識できない
失語言葉が理解しづらく話すのが難しい

関連記事:精神疾患とは?精神障害との違いや種類・特性、利用できる支援制度を解説

ここでは、「ICD10 国際疾病分類第10版」での診断基準を紹介します。
高次脳機能障害の診断基準については、以下の疾患・障害が対象となっています。

  • F04器質性健忘症候群、アルコールその他の精神作用物質によらないもの
  • F06脳の損傷及び機能不全並びに身体疾患によるその他の精神障害
  • F07脳の疾患、損傷及び機能不全による人格及び行動の障害

参考:ICD10 国際疾病分類第10版(2013年版)

てんかん 

てんかんは、脳の全体または一部の過剰な電気運動によっててんかん発作が起きる病気です。内服治療で通常の生活を送る人がほとんどです。
てんかん発作による症状は以下の通りです。

【てんかんの症状】
・意識を失う
・吐き気・頭痛
・全身のけいれんや硬直
・手がぴくっと一瞬動く
・5~10秒くらい動きが止まる
・無意識に口や舌、唇、手を動かす

DSM-5-TRでは、てんかんについての個別の定義は記されていません。ただ、てんかんは神経発達症(発達障害)と併存するケースもあります。

関連記事
精神疾患とは?精神障害との違いや種類・特性、利用できる支援制度を解説
てんかんのある人が職場にいる場合に知っておきたいこと|発作時の対応など

発達障害 

発達障害は、生まれつき持っている「脳の個性・特性」です。(※)人によりその特徴の出方は千差万別ですが、一般的には以下の代表的な3つの診断に分類されています。

診断名症状
注意欠陥多動性障害(ADHD)・不注意
・落ち着きがない
・よく考えず行動する
自閉スペクトラム症(ASD)・人との関わり方が苦手
・コミュニケーションがうまくとれない
・想像力が乏しい・こだわりがある
限局性学習障害(LD)知能全般は正常でも以下の6つの能力のうち1つ以上に障害がある
・聞く
・話す
・書く
・読む
・計算する
・推論する

参考:親子で理解する発達障害 進学・就労準備の進め方

精神疾患の診断分類「DSM」での診断基準は、発達障害の診断名によって異なります。
また精神疾患の診断分類「DSM」では、「神経発達症」として診断基準が列挙されていますが、診断基準に当てはまるからといって発達障害と診断されるわけではありません。
「本人や家族が困難や障害を感じているか」が最も重要な判断基準となっています。

※「発達障害大全 ― 「脳の個性」について知りたいことすべて」より

精神障害(精神疾患)の原因 

精神障害(精神疾患)の原因は、いまだはっきりと分かっていません。性格や環境、体質など、いくつもの要因が影響し合って起こると考えられています。
ここでは、精神障害の主な原因とされるもの4つを紹介します。

  • 遺伝的要因
  • 身体的要因
  • 心理的要因
  • 社会的な要因

参考:精神障害の概要

遺伝的要因 

精神障害の原因として考えられるもののひとつに、遺伝子の関与があります。
人間は遺伝子という設計図をもとに発生し、成長していきます。しかし、生まれ落ちた時の遺伝子的な問題から、生まれ持った脳の働き方に偏りや障害があり、脳の構造や神経物質のバランスに影響を及ぼすこともあります。家庭内で特定の精神疾患を発症する人が多い場合は、遺伝子が関与していると捉えることもあります。
しかし、遺伝的要因をもつ人すべてに精神障害が起きるとは限りません。
あくまでも、特定の精神疾患に対する「かかりやすさ」「脆弱性」を示すものに過ぎず、発症の可能性が高まると考えられる指標のひとつです。

身体的要因

精神疾患の要因として、身体的要因もあります。身体的要因とは、いわゆる身体疾患に関係するもので、脳内の化学伝達物質(神経伝達物質)の異常や、ホルモンのバランスの乱れなどです。

脳の構造や機能に異常をきたす病気として以下が考えられます。

膠原病脳内炎症や免疫異常が神経伝達物質のバランスを乱す。
頭部の外傷脳の特定の部位が受けた損傷が神経伝達や脳機能を障害し、精神障害を引き起こす。
脳血管障害脳の特定の領域で血流が不足しダメージが加わると、脳機能に影響を及ぼし、うつ病など精神障害(精神疾患)に繋がる。
甲状腺機能低下症甲状腺ホルモン不足が神経伝達物質の異常を引き起こす

心理的要因

心理的な要因が精神障害に繋がるケースもあります。主な心理的要因は以下の通りです。

・人間関係の問題…友人や同僚と合わない
・職場のストレス…上司や同僚との関係がギクシャクしている
・学校のストレス…進学・成績の変動や教師との関係に悩んでいる
・経済的な問題…生活が苦しく、追い詰められている
・過去のトラウマ…幼児期の体験や被災体験
・否定的な考え方…状況を悲観的に捉えることがある

もともとの考え方や特性が精神障害のきっかけになる場合があるほか、幼い頃の記憶や周りとの関係性、生活上の悩みが発症のリスクを高めることもあります。

社会的な要因

社会的な要因も、精神障害の発症に関連していると考えられています。社会的要因とは、家庭や学校、職場など集団生活の中で生まれるものです。
他の人々の中で窮屈さや困り感を抱えたままにしていると、精神障害のきっかけになる可能性があります。
以下は、社会的要因の例です。

・家庭…虐待や家族間の不和、介護の負担がある
・学校…いじめ、転校、成績や進学に関する周囲のプレッシャー
・職場…長時間労働、いじめ、ハラスメント、業務内容が自分に合わない

精神障害と診断されたときに知っておきたい制度一覧

精神障害と診断された場合、知っておきたい制度がいくつかあります。
ここでは3つの支援制度について説明します。

  • 精神障害者保健福祉手帳(精神障害者手帳)
  • 障害年金
  • 自立支援医療(精神通院医療)

精神障害者保健福祉手帳(精神障害者手帳)

精神障害者保健福祉手帳は「一定程度の精神障害の状態にある」と認定された人に交付されます。交付を申請するには、精神科医による初診日か6ヶ月以上経過した時点での診断書が必要です。
精神障害がある方の自立や社会参加のため、精神障害者保健福祉手帳をもつ方に対してさまざまな支援があります。
対象者及び対象疾患については以下の通りです。

対象者精神障害によって、長期にわたり日常生活又は社会生活への制約がある方
対象となる疾患・てんかん
・統合失調症
・非定型精神病
・気分障害(うつ病など)
・中毒精神病(アルコール、薬物依存症など)
・発達障害(自閉スペクトラム症、学習障害、注意欠如多動症など)

関連記事:精神障害者手帳とは?2級と3級の違いや申請メリット、利用できる支援制度を解説
参考:
精神障害者保健福祉手帳の診断書の記入に当たって留意すべき事項について
障害者手帳「精神障害者保健福祉手帳」

精神障害者保健福祉手帳には、障害の状態や活動の制限などの判断基準により3つの等級に分けられています。
厚生労働省ではそれぞれの等級について以下のように定義しています。

1級精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの

引用:精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について

それぞれの等級における具体的な状態は以下のとおりです。

等級状態
1級・金銭管理が難しい
・食事や入浴など、自分から身の回りのことができない
・通院や服薬が必要だが、定期的に通うために付き添いが必要
2級・計画的な金銭管理は援助が必要
・食事や身の回りのことをするには援助を要する
・通院や服薬が必要で、定期的な通院は援助が必要
3級・金銭管理はおおむねできるが援助は必要
・自発的に食事や身の回りのことができるが援助は必要
・規則的に通院や服薬はできるが、定期的に通うには援助を要する

関連記事:精神障害者手帳とは?2級と3級の違いや申請メリット、利用できる支援制度を解説
参考:精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について

精神障害者保健福祉手帳を持っていると、さまざまなサービスが受けられます。
地方自治体によってサービス内容が変わることがあるため、手帳の交付を申請する場合は確認しておくと良いでしょう。

全国一律【公共料金等の割引】
・NHK受信料の減免
・税金の控除・減免
【所得税、住民税の控除】
・相続税の控除
・自動車税・自動車取得税の軽減(手帳1級の方)
・その他
【生活福祉資金の貸付】
・障害者職場適応訓練の実施
・手帳を持っている人を雇用した際の、障害者雇用率へのカウント
地域・事業者による【公共料金等の割引】
・携帯電話料金の割引
・上下水道料金の割引
・心身障害者医療費助成
・公共施設の入場料等の割引
・鉄道、バス、タクシー等の運賃割引
【手当の支給など】
・福祉手当
・通所交通費の助成
・軽自動車税の減免
【その他】
・公営住宅の優先入居

参考:こころの情報サイト「精神障害者保健福祉手帳」
関連記事:精神障害者手帳とは?2級と3級の違いや申請メリット、利用できる支援制度を解説

障害年金

障害年金とは、病気やけがによる障害で日常生活や仕事に支障をきたす場合に受け取れる年金です。精神障害の認定は、「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」に基づいて審査されます。

精神障害がある方は、以下の症状・障害に当てはまる場合に障害年金の対象となります。

【障害年金の対象となる精神障害・疾患】

  • うつ病
  • 統合失調症
  • 躁うつ病
  • 発達障害
  • 知的障害
  • 高次脳機能障害
  • てんかん など

ただし、精神障害は他の障害・疾患と違って検査数値や、レントゲン等で診断できないため、他の疾患と異なる対象基準が用いられます。
また、精神障害は、原則として症状固定による障害認定日(※)がありません。
二十歳前傷病(※)である場合を除いて、初診日から1年6か月を経過しないと障害年金が請求できないと理解しておきましょう。

また、以下の精神障害は原則として障害認定の対象外となります。

【障害年金の対象外となる精神障害・疾患】

  • パーソナリティ症
  • パニック症
  • 不安症
  • 解離性障害
  • 不安神経症
  • PTSD(心的外傷後ストレス障害)
  • 適応障害
  • 恐怖症
  • ヒステリー
  • 摂取障害 等

パーソナリティ症は原則として認定の対象となりません。
パニック症以下の神経症にあっては、一見重症なものであっても、原則として認定の対象とはなりません。ただし、臨床症状から判断して、統合失調症ないしうつ病、躁鬱病と同等の病態を示しているものは、統合失調症またはうつ病、躁うつ病に準じて取り扱われます。
(病状が重い場合、うつ病などを併発している可能性もあります。合併症の可能性を主治医と十分に協議し、どの病気が主病名なのかを検討することはとても大事です。)

※障害認定日とは、請求する傷病の初診日から1年6ヵ月を経過した日を指します。障害年金は、原則初診日から1年6ヵ月を経過しないと請求できません。
※二十歳前傷病とは、20歳の誕生日より間に国民年金に加入していないときに初診日がある傷病のこと。

関連記事:
障害者が国からもらえるお金とは?障害年金など利用できる制度を紹介
参考:
障害年金
障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額
障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額

自立支援医療(精神通院医療)

自立支援医療とは、医療費の自己負担額を軽減することを目的とした制度で、医療費の自己負担上限額を超えた分は公費で補填されます。
自立支援医療の対象者となるのは、以下のような人です。

種類対象
更生医療身体障害者手帳を所持しており、手術などで確実に障害の改善が期待できる18歳以上の人
育成医療身体に障害のあり、手術などで障害の改善が見込める18歳未満の人
精神通院医療統合失調症などの精神疾患があり、 継続的な通院治療が必要な人

参考:自立支援医療制度の概要

 精神疾患がある人は「精神通院医療」となり、対象疾患には以下のようなものが挙げられます。

  • 病状性を含む器質性精神障害
  • 精神作用物質使用による精神及び行動の障害
  • 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害
  • 気分障害
  • てんかん
  • 神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害
  • 生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群
  • 成人の人格及び行動の障害
  • 精神遅滞
  • 心理的発達の障害
  • 小児期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害

引用元:自立支援医療(精神通院医療)の概要「対象となる精神疾患」

また、精神通院医療が適用となる医療サービスの範囲は、下記のように決まっています。

【精神通院医療が適用となる医療サービス】
・デイケアや訪問看護
・公的医療保険の対象である
・入院を伴わない診療や薬の処方
・「医療受給者証」に記載された「指定医療機関」
・申請書に記載した精神障害・またはその障害に起因する疾患の治療が目的

関連記事:自立支援医療(精神通院医療)制度とは?対象者や申請方法、就職や仕事への影響を解説

精神障害と診断されたときに受けられる支援一覧 

精神障害と診断された方が受けられる支援は多岐にわたります。
ここでは、精神障害がある方が利用できる支援サービスについて体験談を交えて紹介します。それぞれのサービスがどのような場面で役立つかを理解し、必要に応じて活用しましょう。

  • 精神科デイケア
  • 訪問看護
  • 地域活動支援センター
  • 生活支援センター

精神科デイケア

精神科デイケアは病院・クリニックに併設されたスペースで自立生活に向けた様々なプログラムを受けています。私は統合失調症を発症し入院していましたが、退院後の1年間精神科のデイケアを利用していました。生活リズムの整え方や、障がいへの理解を深めるプログラムを通じて自立生活に向けた準備を整えることができました。(40代男性)

訪問看護

訪問看護は看護師や保健師さんが自宅に訪問し、自分の障がいや病状に合ったサービスを個別にプランを立てて支援を行っていただきます。私は不安が強く、日々の生活や仕事でのちょっとした出来事を深く考え込んでしまい、睡眠に影響が出ることがあります。週に2回、看護師の方に自宅に訪問いただき、自分の不安を話すことで気持ちが楽になって助かっています。(30代女性)

地域活動支援センター

特別支援学校を卒業後、地域活動支援センターを利用しています。エコバッグを作っています。スタッフさんがサポートしてくれるので安心して作業することができます。市民センターのバザーで販売するのがとても楽しいです。(20代男性)

生活支援センター

生活支援センターでは生活に関する様々な相談を受けることができます。月に2回、生活支援センターに行って、担当の支援者さんと面談を行っています。私は障害特性上苦手な公共料金の支払いや、行政の手続きを忘れてしまわないよう、届いた郵便物を持っていき、一つずつ確認してやるべきことを整理してくれるのでとても助かっています。(30代女性)

精神障害で就労・復職・転職に困ったときの相談先一覧 

精神障害によって働き方に困ったときは、以下の窓口で相談しましょう。

  • ハローワーク
  • 就労移行支援
  • 障害者職業センター
  • ジョブコーチ

ハローワーク

ハローワークには、障害者雇用で仕事を探している人に特化した、専門援助部門という窓口があり、障害者雇用の求人を紹介してくれます。私の家の最寄りのハローワークには発達障害者の相談を受ける専門のコーディネーターがいらっしゃり、自分に合った仕事の選び方をアドバイスしてくれたり、検索機の使い方を丁寧に教えていただきました。(20代男性)

就労移行支援

就労移行支援は、就労に向けた職業訓練や就活支援を受けることができる福祉サービスです。私は一般枠で勤務していましたが、うつ病を発症して退職。再就職にあたっては障害者雇用を考えましたが仕事の探し方や準備の仕方がわからなかったので就労移行支援を利用しました。自分の障害の状況や、必要としている配慮事項を職場に伝えるための「ナビゲーションブック」が今も役に立っています。(30代女性)

障害者職業センター

障害者職業センターでは、それぞれの障害に合わせた、就労に向けたリハビリテーションのプログラムを受講することができます。私は業務中の事故により高次脳機能障害を受障しました。復職に向けてどのような仕事が自分に向いているのかを調べる検査を受させていただき、その検査結果をもとに勤務先とも復職の調整をコーディネーターが行っていただいたので、安心して復職することができました。(50代男性)

ジョブコーチ

ジョブコーチ制度は、厚生労働省が推進する支援事業の一つです。ジョブコーチは、障害のある人が円滑に職場に適応し、長く働き続けられるようサポートする役割を担っています。
障害のある方の職場定着や、企業の障害者雇用促進を目的としており「職場適応援助者」とも呼ばれます。
支援期間は通常1〜8ヶ月で、集中支援、移行支援、フォローアップの段階を経て行われます。

配置型ジョブコーチ地域障害者職業センターに配置されている。支援の対象は、就職が難しい可能性のある障害者の方。訪問型ジョブコーチや企業在籍型ジョブコーチと連携する場合は、効果的かつ効率的な支援となるよう助言や援助を行う。
訪問型ジョブコーチ社会福祉法人や就労移行支援事業所に雇用されている。依頼先の企業を訪問し、障害者の特性に配慮した職場環境や職務内容についてサポートする。また、上司や同僚へは指導方法についてアドバイスを行う。
企業在籍型ジョブコーチ障害者を雇用する企業に雇用されている。障害をもつ方が職場に適応できるよう、本人をはじめ上司や同僚、家族へのサポートを行う。

参考:職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業について
関連記事:ジョブコーチ(職場適応援助者)とはどんな制度?わかりやすく解説

精神障害に関するよくある質問Q&A 

ここでは、精神障害についての質問に回答します。

  • 精神疾患と精神障害の違いはありますか?
  • 精神障害をセルフチェックできるサイトはありますか?

精神疾患と精神障害の違いはありますか? 

表記は異なりますが、基本的に精神疾患と精神障害はほぼ同じ意味で使われています。専門家の間でも厳密に統一されていないのが現状です。
あえて区別するなら、以下のように分けられるでしょう。

  • 精神疾患…精神の疾患(病気)
  • 精神障害…精神疾患によって生じる障害

関連記事:精神疾患とは?精神障害との違いや種類・特性、利用できる支援制度を解説

精神障害をセルフチェックできるサイトはありますか? 

インターネット上には精神障害のチェックリストを掲載しているところもありますが、セルフチェックはおすすめしません。自己判断は誤った対処法につながる可能性があり危険です。必ずお医者さんに相談しましょう。

まとめ 

この記事では精神障害(精神疾患)について解説しました。

  • 精神障害(精神疾患)とは 
  • 精神障害(精神疾患)の原因
  • 精神障害と診断された時に知っておきたい制度や支援
  • 精神障害で就労・復職・転職に困ったときの相談先一覧 

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■ 監修者コメント
精神疾患はとても数が多く、治療法も多彩です。また合併症などもあるため、それぞれを理解したうえで、合併症特有の問題にも対処しなくてはなりません。
精神科患者さんを支える福祉制度も多様で、どの制度を自分たちが使えるのか、最初のうちは迷うかと思います。
要するに、覚えることが非常に多い。1回の説明で把握するのは難しいので、何度も聞いたりしながら、時間をかけて理解していってもらえればと思います。

監修者 益田裕介

防衛医大卒。防衛医大病院、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院(復職センター兼務)、埼玉県立精神神経医療センター、薫風会山田病院などを経て、早稲田メンタルクリニック 院長。精神保健指定医、精神科専門医・指導医 精神分析学会所属

著書
精神科医の本音(SBクリエイティブ)2022/8/6
精神科医がやっている聞き方・話し方(フォレスト出版)2022/8/22

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