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発達障害に向く仕事を考える - ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)編
発達障害に向く仕事を考える - ADHD(注意欠如多動性障害)編
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Q1発達障害者に向いている仕事、不向きな仕事はなんですか?
発達障害の方の適職の例として、経理やIT関係等、人間相手の微妙な頃合いで正解が変わるものではなく、ある程度合理的に仕事が進んでいく、成果物も◯、✕(マル、バツ)がわかりやすいという職種があげられます。
苦手な業務としては、電話応対の多い業務、同時並行が多く相手の気持ちも汲みながら働くような接客業務、計画を立て段取り良くかつ時には話を盛って「嘘」をつきながら進めるような営業、ミスが許されない書類の作成などがあげられます。
適職にあげたITであっても、下流工程の言われたことをこなすものは得意な方が多いですが、営業や調整の役割の多いSE(システムエンジニア)は基本的には避けたほうが良いようです。
向いている仕事
ある程度合理的に仕事が進んでいく、成果物も◯、✕(マル、バツ)がわかりやすいという職種
向いていない仕事
- 電話応対の多い業務
- 同時並行が多く相手の気持ちも汲みながら働くような接客業務
- 計画を立て段取り良くかつ時には話を盛って「嘘」をつきながら進めるような営業
- ミスが許されない書類の作成など
重要なのは、向いている仕事、向いていない仕事というよりも、向いている会社・職場・社風、向いていない会社・職場・社風で考えたほうが良いということです。接客でも、マニュアルが整っていて、自分のやり方がある程度認められる「A」という職場では合う人も、マニュアルがなく阿吽の呼吸でやり方が決まる「B」という職場では合わない人がいるからです。つまり周囲の環境とのマッチングが重要です。
なお、発達障害もいくつかの傾向に分かれ、ADHD傾向の人とASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)傾向の人の適職かそうでないかのアドバイスも異なります。
Q2本当に適職なんてあるんでしょうか?
「天職」のような適職が見つかる例は少ないものです。また今の時代は同じ職種ですら中身がどんどん変わっていきます。であれば、自分にぴったりの適職というカード(職種)を探して右往左往するより、配られた・与えられたカード(職種)をしっかりと適職に出来るかどうかの方が大切になってきます。「正しい選択肢を探すよりも、与えられた選択肢を正しくする方が簡単」というわけです。
ただし発達障害の方の場合、想像が苦手なため、適性の全くない職種を選んでしまうリスクが高く、青い鳥症候群(自分に合った仕事がどこかにあるはずと思い続ける)になりやすい傾向もあるため、より専門的な就業支援を受けることが重要です。
Q3発達障害がわかったら、転職すべきですか? 障害者枠のほうが良いですか?
得手不得手や職場での様々な問題が、発達障害・アスペルガー・ADHDというキーワードで理解できたとしたら、それは一つの発見としてプラスにとらえていただきたいと思います。診断や特性がわかると、その苦手さを今の職場で見えづらくする工夫が出来る可能性が高まります。障害特性というのは基本的にはなくなりませんから、克服を目指すというよりも、目立たなくするという対策になりますが、原因がわかったことは大きなステップです。
ある程度対策が見えて、職場で力が発揮しやすくなったのであれば、診断があっても転職する必要はなく、また障害者枠にする必要もないでしょう。一方で、ある程度特性を理解して対応しようとしても、深みにはまったり苦しさが変わらない場合は、転職や障害者枠も考えたほうが良いと思います。
ご自身で変化しきれない場合、上司に仕事の種類をかえてもらったり、部署異動など、周囲の変化をお願いするという手ももちろんあります。ただその際も、ご自身が変わろうという意志や行動を見せることが周囲を動かすカギになることは忘れないでください。
発達障害に向く仕事を考える - ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)編
Q1職人的なもの、伝統工芸、農作業などが特性にあいそうです。このような仕事への就職活動はどうすればよいですか?
手先が器用で手仕事に適性のある発達障害の方も多いのですが、職人は自営業が多いため、自分で経理をしたりマーケティングをしたりと、経営につきもののマルチな仕事をこなす力が必要です。
また年季で積み上げる職人芸の部分は上手に言語化・体系化されておらず、マニュアルがありません。発達障害の方が苦手な阿吽の呼吸、「見て学べ」的な部分、同時並行で動く部分が多く、かつ目に見えないルールが多い職種でもあります。このため現実的には職人系はあまりお勧めできる分野ではありません。
伝統工芸や農業などは人材不足の業界であり、行政で様々なサポートをしている部分です。まず担当の行政にお問い合わせをされるとよいと思います。
Q2定型業務が良いなら公務員はどうでしょうか?
公務員の仕事は定型と思われがちですが、最近は定型部分はすでに業者に委託しており、職員が行っているのは企画・調整など多くの発達障害の方が苦手な業務です。
また、公務員試験に合格するためには、苦手な分野がある程度できたり、専門職での受験をしたりと、作戦をかなり練らないと難しいと思います。
公務員の障害者枠ならどうか、というご質問もよく受けます。公務員ではフルタイムの障害者採用は身体障害者がほとんど。知的障害者や発達障害者向けの「チャレンジ採用」という3年限定の雇用枠は各地にありますが、フルタイム(正職員)にはさせてもらえないものばかりのようです。つまり障害者枠に限っては民間企業のほうが(任せる職種の多様さや給与の高さでは)進んでいますし、安定も民間企業のほうがしやすいと思います。
Q3発達障害に良いといわれるコツコツ系・ルーティン系の仕事だとお給料が低いようです。それなりの給与がもらえる仕事はありますか?
「定型業務」・「下流工程」はたしかに多くの人ができる可能性があり、給与が低めに抑えられがちです。一方で適性を活かしつつより高い給与の期待できる職種も存在します。
決められたものをその通りに行うことのできる強みを活かした経理、財務、法務はもちろん、最近重要性が増す個人情報の管理などは向いているでしょう。またしっかりとマニュアルさえあれば、コールセンターやテクニカルサポートなど対人業務もこなせることがあります。
知識や論理などが重要である一方で、ある程度すべきことが予想されるような仕事も向いています。プログラマーやネットワークエンジニアなどのいわゆるITの中での下流工程の仕事に加えて、知識が豊富なほどセールストークに磨きのかかる電化製品の販売など、販売職にも適性を感じる人が多いようです。
工業製品などのデザインやCADといった、機能を求められる部分でかつ画像や映像など視覚情報のこだわりが生かせる工業デザインの分野も、ASD特性の強い人にフィットする職種です。ほかに放射線技師など資格が必要な仕事もあげられます。
Q4コミュニケーション力を鍛えるためにわざと苦手な仕事をすべきですか?
真面目な考え方で、大学生のアルバイトの時には重要かもしれませんが、フルタイムで働くとなるとお勧めしづらくなります。わざわざ苦手な職種に飛び込むより、どのような仕事でも必要とされるコミュニケーション能力、対人交渉能力の基礎を身につけるために何ができるか、周囲の方や就業支援のプロに相談してみてはいかがでしょう。
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Q1. ADHDの人が就活で成功した業界・職種は何ですか?
黄金の法則のようなものが見えにくいのがADHDであり、採用の多い業種・職種の傾向というのも見えにくいと思います。当社では3つの特徴に分けてお仕事をご案内しています。
- 編集、記者、ディレクター、カメラマン など自分の興味を発信できる仕事
- 料理人、整備工、プログラマー、アニメーター、デザイナー などモノ作りに関わる仕事
- 研究者、学者、塾講師、教員 など専門分野に特化できる仕事
Q2. どうしたら自分に合う仕事に出会えますか?
まず自分を知ること、そうすれば適職やあった業界が見やすくなります。しっかりと自分をアセスメントし、広い業界・職種の視野を持つメンター・支援者を持つことが重要です。大人のADHDについては、ご本人の興味関心や集中度が保ちやすい職種・仕事の現場を選ぶことが重要です。さらに業務はいろいろと多彩にできるよりも、一つをしっかり深める必要があります。
また、発想が豊かな半面、気移りがしやすいのがADHDの特性のマイナス面なので、一つの職種にしっかりと落ち着けるかが重要です。一方でやや矛盾しますが、何をするか決めても、今の世界はどんどん中身が変わります。このため例えば、この分野のプログラミングだけがしたいなどと極端に分野を狭めず、プログラミング全般など広めに興味関心を持ち、絶えず新しいものを学び続ける姿勢を持ちましょう。
Q3. 障害者枠のほうが良いのでしょうか?
ADHDの人が最も訴えるのはミスの多さ、抜け漏れの多さであるため、ミスや不注意が許容される文化や業務内容を考える必要があります。この時、何か特定の分野だと注意力がUPする人もいますが、実はそれだけを考えればよいわけではなく、作業の手順や、一緒に働く人のタイプ、職場の雰囲気などのフィット感も非常に重要です。
こうしたことが上手に乗り越えられるなら一般枠でもよいと思いますし、周囲に上手に合わせてもらうこと、つまり配慮を多めに要求するなら障害者枠が良いのではないかと思います。あくまで一般論ですので、具体的には周囲の人や支援機関などにご相談されることをお勧めします。
Q4. ADHDに起業やフリーランスは向きますか?
たしかに起業家やフリーランスで働く人の中にADHD的な気質を持った方は多いと思われます。しかしADHDだからみんながみんな起業に向くというわけではありません。
ADHD傾向のある人には、ミスの多さや苦手なものへの集中力の弱さ、計画やその修正、つまり段取りの苦手さなど、一人で何でもすることが必要な起業・フリーランスには向かない部分が多いことは否定できません。起業・フリーランスで成功するためには、周囲の人を上手に巻き込み自分の苦手を補ってもらうことが肝要になると思います。
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