「自分に向いている仕事が分からない」「何をやっても続かない」…。ADHD(注意欠如・多動性障害)の診断がある方や、その傾向を持つ方の中には、仕事探しに迷っている方も多いのではないでしょうか。
この記事は「ADHDに向いている仕事」というテーマで解説していきますが、最初にお伝えすると「ADHDだからこの仕事が向いている」という職種があるわけではありません。
一言でADHDといっても特性の強弱や現れ方は人それぞれ異なります。自分の特性に合った仕事を選ぶことで、安定して働き続けることができ、強みを活かして成果を出しやすくなります。
また、ADHDの方は、自分の好きな分野・得意分野では集中力を保ちやすかったり、ミスも少なくなることが多いです。そういう意味では、「自分の好きな分野の仕事を選ぶ」というのも大切なポイントの一つです。
この記事では、ADHDの特性ごとに向いている仕事(=特性が長所になりやすい仕事)、向いていない仕事(=特性が短所になりやすい仕事)を例を挙げて解説し、仕事選びのポイントをお伝えします。
目次
ADHDの特性と仕事選び
ADHDの特性は大きく分けて「不注意」「多動性」「衝動性」の3つに分類されます。しかし、その現れ方は人によってさまざまです。
たとえば、ミスが多いことに悩む人もいれば、じっと座っているのが苦手で落ち着かないと感じる人もいます。また、アイデアがどんどん浮かんでくる人もいれば、一つのことに夢中になりすぎて時間を忘れてしまう人もいるでしょう。
こうした特性を理解し、自分に合った仕事を選ぶことが重要です。
ADHDの特性が活かされやすい仕事
ADHDの人に比較的よく見られる特性ごとに、その特性が活かしやすい仕事を挙げていきます。自身の特性と照らし合わせながら、参考にしてみてください。ただし繰り返しですが、「自分の興味が持てる分野かどうか」も重要なポイントですので、特性が合うからといって興味がない分野の仕事を選ぶことはおすすめしません。
発想力を活かせる仕事
ADHDの多動性が強い方の中には、次々とアイデアが浮かぶ「脳内多動」とも言われる特性を持つ人がいます。こうした発想力を活かせる仕事は、ADHDの強みを発揮しやすいでしょう。
向いている職種の例
- クリエイティブ系(デザイナー、ライター、動画編集者)
- 広告・マーケティング(企画職、コピーライター、SNS運用)
- 研究・開発(新しいアイデアを生み出す仕事)
フットワークの軽さを活かせる仕事
衝動性が強い方は、思い立ったらすぐ行動できることが強みになります。この特性が求められる仕事では、高いパフォーマンスを発揮できるでしょう。
向いている職種の例
- イベントスタッフ、ツアーコンダクター
- 営業職(即時の対応力が求められる)
- 教育・育成(子どもや新人の指導)
行動力を活かせる仕事
後先考えずに行動してしまうことがデメリットに感じることもありますが、ビジネスの世界ではそれが強みになることもあります。特に、スピード感のある業界や起業家としての働き方が向いているかもしれません。
向いている職種の例
- 経営者・起業家
- フリーランス(ライター、デザイナー、コンサルタント)
- スタートアップ企業の営業・企画職
人と話す仕事
初対面の人と話すことが得意だったり、社交的な性格の方は、人とのコミュニケーションが求められる仕事が向いています。
向いている職種の例
- 接客業(カフェスタッフ、ホテルフロント、販売員)
- カウンセラー・コーチング職
- カスタマーサポート、コールセンター
過集中を活かせる仕事
特定の分野に関しては時間を忘れるほど没頭できる「過集中」の特性を持つ方もいます。この特性を活かせる仕事を選ぶことで、長所として活かすことができます。
「自分が興味のある分野であれば高い集中力が発揮できる」など特定の条件があれば、その条件にあった仕事を選ぶと良いでしょう。
向いている職種の例
- ITエンジニア、プログラマー
- 職人・技術職(ものづくり、研究開発)
- ゲームクリエイター、映像編集
なお、過集中の場合は高い集中力を発揮できる反面、作業後にどっと疲れが出てしまうことに注意が必要です。定期的に休憩を組み込んだり、タイマーを使って休憩を取るなど留意しましょう。
ADHDの方に向いていない仕事
逆に、ADHDの特性が業務上の困難に結びつきやすい仕事の例をあげて解説します。こちらも、自身の苦手さと照らし合わせながら参考にしてみてください。
細かい正確性が求められる仕事
不注意特性がある場合、どうしても細かいミスが出てしまうことは避けられません。細かい照合作業やミスが許されない仕事は、避けた方がよいでしょう。
例
- 経理・会計職
- データ入力
- 精密機械の組み立て作業
ミスがあっても気づきやすい仕事(書類上ではなく現物を扱う仕事など)や、ダブルチェック体制が整っている職場環境などを選びましょう。
一つの業務にずっと取り組む仕事
ADHDの方の中には、単調な繰り返し作業が続くと集中力が切れやすい方も多いと思います。飽きてしまうという方もいらっしゃるでしょう。
例
- 工場のライン作業:担当作業を繰り返し行う。
- 単一業務を担当する事務職:データ入力などを終日行うなど。
いくつかの業務を兼務できる職場環境や、PC作業ではなく体を動かす仕事などを検討しましょう。
短時間・短納期の仕事
時間に追われる中で正確性を求められる環境では、ミスが増えたりストレスが溜まりやすくなります。
例
- 校正・校閲:締め切りまでに文書の誤字・脱字をチェックする。
- 経理・会計職:締め日などでは、締め切りまでの短時間で正確な作業が求められることがある。
ある程度時間に余裕のある仕事を探したり、就職活動の際に納期に余裕を持たせることが可能か相談してみると良いでしょう。
細かい手順やチェック項目が多い仕事
ADHDの方の中には、いわゆる「ヌケモレ」が生じやすい特性の方もいるでしょう。手順やチェックリストが細かく定められている業務だと、手順のヌケモレが発生しやすくなります。
例
- テストエンジニア:マニュアルの項目に沿って動作確認し、バグを見つける。
- 品質管理(文書作成・監査対応):工場や研究機関でのマニュアル作成、チェックリストに基づいた確認作業が必要。
「最終的な成果物が問題なくできていれば、細かい手順は問わない」といった性質の仕事を探すと良いでしょう。(ただし、最終的な成果物にミスがないよう、自分なりにやり方を工夫することは必要です。)
障害者雇用でよくある仕事とADHDの相性
ADHDの診断や特性を開示して働くことを考える場合、障害者手帳を取得して「障害者雇用」枠で働くことを検討されている方もいるでしょう。
障害者雇用で応募が多い、事務職・ITエンジニア職とADHDの相性について解説します。
ADHDに事務職は向いていない?
書類作業やPC業務が中心の事務職は、ADHDの特性から考えると難しそうに思えます。しかし、実際にはADHDの方でも事務職で活躍している人は多くいます。
工夫次第で活躍できるポイント
- ダブルチェック体制がある職場を選ぶ
- タスク管理ツールや、自分用のチェックリストなどを活用する
- 「興味のある分野の事務」を選ぶ(好きなことなら集中しやすい)
- 服薬により特性を緩和させる など
ADHDにITエンジニアは向いていない?
そんなことはありません。技術や知識の習得に興味がある方が、ADHDの特性を活かしてITエンジニアとして活躍している事例が多くあります。
ADHDの強みをITエンジニアとして活かしている例
- IT技術・知識への関心や、発想力をプログラミングに活かす
- 知識があり、人と話すことが好きな場合は、ITヘルプデスクなどで働く
- 飽きやすい・興味関心が移り変わりやすい特性がある場合は、定期的に環境や案件内容が変わるエンジニア派遣などの働き方を選ぶ など
ADHDの方に合う仕事を探すなら「マイナーリーグ」
ADHDの方に向いている仕事、向いていない仕事を特性ごとに解説してきました。人により特性の現れ方は様々ですので、「ADHDだから〇〇職」ではなく、「自分の特性は●●だから、こういう仕事が合いそう」「自分はこの分野なら興味や集中力を保って働けそう」という観点で自身に合う仕事を探していただければと思います。
就活での障害特性の伝え方については、以下の記事も参考にしてみてください。
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