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精神障害・発達障害の特性により面接が苦手な人におすすめしたい4つの対策

精神障害や発達障害の診断を受けている人のなかには、障害特性もあり面接への苦手意識をお持ちの方も少なくないのではないのでしょうか。

せっかく仕事に活かせる能力があるのに、面接で心証を損ねて活躍の機会がなくなってしまうのは、求職中のご本人にとっても、雇用する企業にとっても、もったいないことです。もちろん必要以上に自分を大きく見せて、雇用されたあとに苦労するのは本末転倒ですが、採用面接において自分の「等身大」の意欲や能力を面接の場でお伝えすることはとても重要なことと言えるでしょう。

本記事では、特に精神障害や発達障害の診断があり、障害特性によって面接に苦手意識を感じている方、何度面接してもなかなか内定を得ることができないでいる方に向けて、効果的な4つの対策をお伝えします。

想定問答集を作成する

想定問答集は、面接で想定される質問にあらかじめ回答を準備し、資料としてまとめておくものです。想定問答集は面接対策の王道です。面接に苦手意識がある方は、想定問答集を作成することをおすすめします。

面接対策として、模擬的な面接練習に取り組まれている方は多いかもしれません。面接での所作を身に着けたり、話し方を改善するうえで面接練習は効果的ですが、想定問答集を組み合わせることで、より効果的な面接対策となります。いたずらに面接練習ばかりを繰り返していても改善は頭打ちになります。事前に想定問答集を準備したうえで面接練習を行い、面接官役の相手からフィードバックを想定問答集に反映し、ブラッシュアップすることでより効率的に面接に向けた準備となるでしょう。

一般的に面接で聞かれることが多い質問を列挙しました。以下に挙げた質問リストを参考に想定問答集に着手し、実際の面接で聞かれてうまく答えることができなかった質問を追加しながら、自分に合ったオリジナルの想定問答集を作成してみてください。

対象となるケース想定される質問
一般枠、障害枠に限らず準備すべき質問まずはじめに自己紹介をお願いします
当社を志望された動機をお聞かせください
あなたの弱みと強みを教えてください
当社でどのような業務を行ってみたいですか
これまでにリーダーシップを発揮した経験はありますか
あなたの強みを当社でどのように生かせると思います
障害者雇用の応募で特に準備すべき質問あなたの障害について教えてください
当社に配慮してほしい事項、避けてほしい業務はありますか
趣味や休みの日はどのように過ごしていますか
体調管理で普段から心がけている習慣はありますか
就労移行支援に通所している方就労移行支援ではどのようなことを訓練されていましたか
新卒採用学生時代に力を入れたことは何ですか。また、そこから何を学びましたか
アルバイトの経験はありますか。ある場合そこで何を学びましたか
就労経験のある方(キャリア採用)これまでの仕事の経験について詳しくお聞かせください
前職を退職された理由をお聞かせください
職歴があり、未経験の職種に応募する場合今まで行っていた業務との関連性はなくなりますが大丈夫ですか

質問の回答は原則1分以内にまとめる

面接における一問一答で、回答が長くなってしまう方をよく見かけます。

質問に対して丁寧に回答することはわるいことではないのですが、面接官は限られた時間内にできるだけ多くの聞き取りを行いたいと考えています。必要以上の長い回答は、面接官からの心証を悪くしてしまうことがあるでしょう。また、回答しているうちに元々面接官が聞きたかったこととズレた回答になってしまうこともよくあります。

面接官は、単に回答の内容(言語情報)だけではなく、面接で話している様子(非言語情報)を見て、入社後に活躍できそうかどうかを総合的に判断します。端的に質問に答えていない、話がつい長くなってしまうといった印象を与えることで、普段の仕事でもコミュニケーションに支障が出るのではないかと懸念されるかもしれません。以下のようなタイプに当てはまる方は、特に注意が必要です。

面接で質問回答が長くなりがちな人の傾向

  • 普段の会話でも、自分一人が一方的にしゃべりすぎてしまうことがある
  • 話がまとまらず、しゃべっている途中で何を話しているかわからなくなる
  • 仕事の報告・連絡・相談で、「結論から話して」と注意されることがよくある

質問回答が長くなりがちな人におすすめの対策

質問の回答は、原則1分以内にまとめましょう。短くまとめるためのコツは、聞かれていることの答えをまず先に伝え、その説明を後から付け加えることです。YesかNoかで答えることができる質問は、まず先にYes/Noを伝えましょう。以下の例を参考にしてみてください。

質問回答例
あなたの強みを当社でどのように生かせると思います私には集中して業務に取り組むことができるという強みがあります。現在通っております就労移行支援事業所のデータ入力業務では、ミスなく正確にかつスピードも意識して作業に集中できており、スタッフの方からも評価されております。この強みを活かし、御社のデータ入力業務並びに事務作業に集中して取り組みたいと思います。
当社に配慮してほしい事項、避けてほしい業務はありますか配慮していただきたいことが2点あります。
1点目は月1回平日に通院時間を取らせていただけるよう配慮をお願いいたします。2点目は、勤務時間になりますが最初は社内規則の範囲で短縮勤務からスタートできるとありがたいと思います。
今まで行っていた業務との関連性はなくなりますが大丈夫ですかはい。問題ありません。
新しいことに挑戦することでスキルアップを図りたいと考えておりますし、就労移行支援事業所の訓練で学んできたホウレンソウの大切さやチームワーク、勤怠の安定や丁寧に作業を行うといった基本は御社でも活かせると考えております。

話し言葉の1分間を文字数に置き換えると、原稿ベースで300~400字程度です。想定問答集をExcelで作っている場合は、len関数で文字数をカウントすることができるので、300~400字を目安に想定問答を作文するとよいでしょう。

面接で想定問答集を見ながら回答する

しっかり答えを準備していたはずなのに、いざ面接の場面で準備したことを思い出せず、言葉が出ない。沈黙の時が流れてしまう。相手を待たせてしまうプレッシャーで、ますます焦ってしまいどんどん頭が真っ白になり、悪循環に陥ってしまう。そんな経験をすれば、面接に苦手意識を持つのも致し方ありませんよね。

障害の有無に関わらず、だれにとっても面接という場面は緊張するものですが、少なからず障害特性が影響しているかもしれません。以下のような障害特性に該当する方は、特にこのアドバイスを参考にしていただけるとよいでしょう。

面接で言葉が出ず固まってしまう人の傾向

  • 特に面接などのかしこまった場面で緊張して頭が真っ白になる
  • 台本通りにしゃべるのは抵抗がないが、自分の考えや抽象的な質問に回答するのは難しいと感じる
  • 検査結果で処理速度(ワーキングメモリ)が低めの結果が出た

面接で言葉が出ず固まってしまう人におすすめの対策

言葉が出なくて固まってしまう心配がある人は、面接のときに想定問答集を手元に持って、面接を受けましょう。

「そんなことしてもいいの?ズルにならないの?」と思われる方もいるかもしれませんが、心配ありません。面接の冒頭であらかじめ断りを入れておけば、面接官の心証を害することはほぼないでしょう。

想定問答集を見ながら面接を受けることについて了承を得るための台本(一例)
面接を受けさせていただくうえで一点ご了承いただきたいことがございます。私は障害特性により、面接など人の目線が集まる場面では過度に緊張してしまい、質問の回答で言葉に詰まってしまうことがあります。ご質問いただいた内容についてお待たせせず、的確にお答えしたいので、あらかじめ用意したメモを見ながら面接を受けさせていただけないでしょうか。

面接は口頭試問の試験ではありません。用意した答えを丸暗記する必要はないのです。多くの面接官は、言葉が詰まってコミュニケーションが滞るよりは、メモを見てスムーズに答えてくれた方がよっぽどよいと思っています。

また、「言葉に詰まったときには想定問答集を見ればよい」という安心感があるので、心理的にも負担が軽減します。手ぶらで面接を受けるよりはずっと落ち着いて面接を受けることができると思うのでぜひ試してみてください。

一方的な他責的表現を控え、ソフトな言い回しにする

退職理由や中途退学などの理由を聞かれたときなどに、その原因を周囲の人や環境のせいにして説明するのは注意が必要です。

たとえ事実がそうだったとしても、過去の出来事に対する恨みつらみばかりを話していては、人のせいばかりにして自分の非を認めない方なのかな?とか、被害者意識が強い人なのかな、という負の印象を与えてしまい、自分が損するだけです。

他責的な表現でネガティブなイメージを与えてしまう人の特徴

  • 人間関係で誤解を受けて損をすることが多いと感じている
  • 過去の出来事に対する負の感情が強く、今思い出しても気持ちがざわざわする
  • 自分の発言を相手がどう思うか、あらかじめ想像しながら話すのが苦手

他責的な表現でネガティブなイメージを与えてしまう人におすすめの対策

誤解を招かないようにお伝えしますが、事実を捻じ曲げて過去の退職などをすべて自分のせいにして伝えなさい、と言っているわけではありません。自分が損をしないように、伝え方を工夫しましょうという提案です。

具体的には、以下のようなポイントを考慮するとよいと思います。

  • 今思えば、あのとき自分もこうすべきだったという反省を付け加える
  • 前職の上司など、特定の個人を攻撃するような表現は控える
  • 回答の結びの部分は、「今後に活かしたい学び」や「気付き」などポジティブな内容で締める

「新卒で入社した企業で、上司のパワハラに耐えかねて体調を崩し、1年で退職した」というケースを例として、良い例と悪い例を示します。

悪い例配属先で運悪くパワハラ上司の下に配属されたためです。深夜までの残業を強制したり、業務成績に対するプレッシャーをかけてきたり、私のいないところで私の悪口を部内の同僚に話していたり、執拗な攻撃をされせいで体調を壊して退職に至りました。
良い例深夜に及ぶ残業や、業務のプレッシャーで体調を崩してしまったのが主な退職理由です。また、背景には当時の直属上司との折り合いの悪さもありました。割と年配の方で、会社も小さく昔気質なところもあり、指導方法のあたりが強く、自分とは相性が合わないと感じていました。今思えば、もっと早めに周囲の先輩や他部署の管理職に相談していれば体調を壊す前に対処できたのではないかという反省もあります。その後はその学びを活かして、悩み事があれば一人で抱え込まず、できるだけ早く周囲の方に相談するように心がけております。

いかがでしょうか。良い例の伝え方の方が、ポジティブな印象を与えることができると思います。

まとめ

面接が苦手と感じている方に向けて4つのアドバイスを行いました。少しでもご参考になれば幸いです。

最後に、一つだけお伝えします。何度も面接を受けているけど、どうしても結果が出ないと悩んでいる方にお伝えしたい、最大のアドバイスは「周囲に相談して客観的なアドバイスをもらう」ことです。面接で重要なことは、自分がどれだけ伝えたいことを伝えることができたかではなく、周囲からどのように見られ評価されたか、ということです。

自分が他人からどう見えているかを、自分自身で知ることはだれにとっても難しいものです。一番の近道は、周囲の人からどう見えているかフィードバックをもらい、それを素直に改善につなげることです。ぜひ一人で抱え込まず、周りの力を借りながら、面接準備に臨んでいただければと思います。

著者プロフィール 大野順平

株式会社Kaien
就労支援事業部 法人サービス担当
ゼネラルマネージャー / シニアディレクター
2014年Kaienに入社。これまで30社以上の精神・発達障害人材の雇用推進プロジェクトに参画。

論文寄稿:月刊精神科「就労支援におけるneurodiversity」(2023年9月,科学評論社)
取材対応:朝日新聞「発達障害は「わがまま」? 働く場の合理的配慮?」特集
NHK クローズアップ現代+「企業が注目!発達障害 能力引き出す職場改革」 他多数
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