就労移行支援とは、平成 18(2006)年の障害者総合支援法と同時に定められた「障害福祉サービス」の就労支援の種類のうちの一つです。
就労支援では、就職・定着・生活の3つにわけて支援を行います。
就労移行支援は、そのなかの就職(就労)を支援するサービスです。
この記事では、就労移行支援の基礎知識や、実際に就労移行支援(株式会社Kaien)を利用している86人にアンケートを取った内容を交えて体験談や実態を紹介します。
目次
就労移行支援事業とは
就労移行支援とは、平成 18(2006)年の障害者総合支援法と同時に定められた「障害福祉サービス」の就労支援の種類のうちの一つです。
就労支援では、就職・定着・生活の3段階にわけて支援を行います。
就労移行支援は、そのなかの就職(就労)を支援するサービスです。
就労移行支援の支援に携わる人が、障害のある方といっしょに就労前・就労活動・就労時に環境調整やサポート・相談を行います。支援に携わる人は、障害のある方の就労先へ支援も行います。
障害のある方が働き続けやすい環境を整えるお手伝いをします。
就労支援のサービスの種類と違い
先述した就労支援のサービスと関わる段階の違いについて説明します。
サービスの種類 | 関わる段階 |
---|---|
就労移行支援 | 就労前に自身の適職を探したり、課題を確認するサービス 就職活動時に実習を通して職業適性などを見極め、特性にあった職業に出会うためのサービス 就職後、半年間は定着支援もあわせて受けられる |
就労定着支援 | 就労時に本人と職場が続けやすい環境に整えるためのサービス |
就労継続支援A型・B型 | 一般企業での就労が難しいと本人と支援者で判断した際に自身にあった働き方を見つけるために就労訓練などを受けるサービス |
自立訓練(生活訓練) | 障害のある方が自立した生活を送れるよう、ライフスキル、人との付き合い方や就職など社会参加について、トレーニングや相談、助言といった支援を提供するサービス |
障害者就業・生活支援センター | 障害者就業・生活支援センターとは、障害のある方が就労面や生活面について気軽に相談できる福祉施設 主に障害のある方の雇用促進や就労の安定を目的としています |
就労移行支援の対象者
就労移行支援の対象者は以下のとおりです。
- 身体障害、知的障害(知的発達症)、精神障害、発達障害、難病がある方(※)
- 一般企業などへ就職したいと考えている方
- 休職中の方(一定の条件を満たした方が対象です。)
- 18歳以上65歳未満の方
(※)難病がある方は、障害福祉サービスなどの対象となる疾病(就労移行支援も含む)については以下のURLを参考にしてください。
令和6年4月1日時点
参考:障害者総合支援法の対象となる難病が追加されます
厚生労働省の資料では、この事業の対象者について以下のとおり記しています。
一 般就労等を希望し、知識・能力の向上、実習、職場探し等を通じ、適正に合った職場への 就労等が見込まれる 65 歳未満の者
引用元:就労移行支援事業所のための発達障害のある人の就労支援マニュアル
就労移行支援の基礎知識
就労移行支援の基礎知識について、項目別に分けて説明します。
- 受けられるサービス
- サービスを受けたい場合の相談先
- 利用するまでの流れ
- 利用料金
- 利用期間
受けられるサービス
就労移行支援で受けられるサービスは以下の通りです。
就労移行支援では、大きくわけて就労前の準備の支援と就労活動時の支援に分けられます。
参考元:発達障害の人の「就労支援」がわかる本 (健康ライブラリースペシャル) | 梅永 雄二 |本 | 通販 | Amazon
就職前の準備の支援
- 本人と支援者でジョブマッチングを考える
- 相談・検査を通じて自己理解を深める
- 支援者といっしょに職業適性や課題を確認する
就職活動への支援
- 実習を通して職業適性や課題を確認する
- 特性にあった適職を具体的に探す
- 障害者雇用を選択肢として検討する
- 助言を受けながらエントリーし、試験や面接へ
就労定着支援では、就労後の環境調整を本人・企業・支援者とともに行います。
就労移行支援を受けたい場合の相談先
就労移行支援(就労支援)を受けたい場合は以下に相談をしてみましょう。
相談先一覧 | 調べ方もしくはサイトのURL |
---|---|
お住まいの地域の障害福祉課 | お住まいの地域の市区役所にあります。 |
発達障害者支援センター | 発達障害者支援センター・一覧 |
ハローワーク | ハローワーク等所在地情報 |
就労移行支援を利用するまでの流れ
就労移行支援を利用するまでの流れは以下の通りです。
①通える範囲内にある就労移行支援事業所を探す
まずは、就労移行支援事業所を探します。
探し方は、以下の3つがあります。
自治体の窓口で相談する | お住まいの地域の福祉事務所、福祉課で就労移行支援事業所を利用したい旨を伝えて相談する方法 |
---|---|
専門機関へ相談する | 以下の4つの専門機関のどれかに相談する方法 ・ハローワーク ・障害者相談支援事業所 ・障害者就業・生活支援センター ・地域障害者職業センター |
検索サイトから探す | WEB検索で「就労移行支援事業所 〇〇市」と検索して見つける方法 |
②就労移行支援事業所を見学し比較する
就労移行支援事業所へ実際に見学へ行って、プログラム内容について詳しく聞く、事業所や利用者の雰囲気を確認して、比較して見ましょう。
③「障害福祉サービス受給者証」を申請する
就労移行支援事業所をいくつか比較検討し、利用したい事業所が決まったら利用申請のための「障害福祉サービス受給者証」を申請しましょう。
お住まいの市区町村の行政窓口に就労移行支援を利用したい旨を伝えて、必要書類を用意してから「障害福祉サービス受給者証」の利用申請を行います。
「障害福祉サービス受給者証」の流れについては以下の記事でも詳しく解説しています。
④就労移行支援事業所と利用契約をする
「障害福祉サービス受給者証」を発行したら、利用する就労移行支援事業所と利用契約を行います。
⑤サービスの利用開始
利用契約を行い、サービスの利用を開始します。
就労移行支援サービスの利用料金
就労移行支援の利用料金は前年の本人と配偶者の世帯収入によって利用料が発生する場合があります。
利用料金は、月の利用回数×利用する単価で決まります。
ただし、前年の収入状況において「負担上限月額」が決まっています。
世帯の収入状況 | 負担上限月額 | 補足 |
---|---|---|
生活保護受給世帯 | 0円 | – |
低所得世帯 | 0円 | 3人世帯で障害基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象 |
市町村民税課税世帯 | 9,300円 | 収入が概ね670万円以下の世帯が対象 入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合「上記以外」に含まれる |
上記以外 | 37,200円 | – |
また就労移行支援を利用する際は、事業所に通うための以下のようなランニングコストもかかることも把握しておくと良いでしょう。
- 就労移行支援事業所までの交通費
- 就労移行支援事業所での食費
交通費においては、お住まいの自治体によって福祉サービスとして交通費を支給してくれたり、事業所によっては安価で食事を提供している場合もあります。
就労移行支援サービスの利用期間
就労移行支援サービスの利用期間は、最長2年です。
ただし、一度利用してから2年以内であれば残りの期間を再利用することが可能です。
全体の利用期間が2年を超えていなければ何度でも再利用できます。
また利用期間は、就労移行支援事業所や自治体の判断によってリセットされる場合もあります。
就労移行支援サービスは、規定の2年に加えて最長で1年間の利用期間延長を認められるケースもあります。
なお、利用期間によっては自治体により細かい判断が異なることもあるので、詳細はお住まいの自治体の障害福祉課に確認しておくと良いでしょう。
就労移行支援が意味がないって本当?86人に聞いた就労移行支援の利用体験談
就労移行支援事業所である株式会社Kaienを実際に利用している人へ向けて、就労移行支援に関するアンケートをとりました。
アンケートをもとに就労移行支援を受けるメリットやデメリットについて説明します。
このアンケートでは、実際に利用していた就労移行支援サービスの数もアンケートで取得しています。
ほとんどが1社(株式会社Keien)の利用者のみですが、2つ以上の就労移行支援サービスを利用している方もいます。
就労移行支援サービスの利用に迷っている方はぜひ参考にして下さい。
就労移行支援を受けるメリット
就労移行支援事業所を利用して良かったと感じている人は全体の91.0%で、ほとんどの方が、「利用して良かった」を選んでいました。
具体的に利用して良かった点について体験談ベースで紹介します。
就職に有利な情報を得られた
【体験談】
ぼんやりとした理解しか得られていなかった就職活動そのものや就職後の環境について、動画(就活シアター)や面談を通し、理解することができて安心した。
【体験談】
Kaienの求人には福利厚生などでいい求人が結構多くてよかった。
【体験談】
履歴書や職務経歴書を赤ペンをしてもらい、自分の特性や能力を知る相手から客観的に添削してもらえたことに安心した。
自分の弱みや強みに対する理解が深まった
【体験談】
発達障害の診断が出てから数年しか経っていなかったので、あまり自己理解・障害受容が進んでいなかったが、通ってみて精神的な波があり勤怠が崩れた時に担当スタッフと対策を話し合って乗り越えられた。
【体験談】
自分は体力がないから週4日までしか通所できない、だから時短勤務しか難しいだろうと思い込んでいたけれど、環境を整えてもらえたら週5日しっかり通所することができることがわかり、就活の可能性が広がった。
集団行動・コミュニケーション能力が向上した
【体験談】
グループワークを実施した際に、自分が言葉にできなかった部分ですれ違いが起こり、その際にグループワークのメンバーから厳しい意見が飛んだ際には、悔しい気持ちと納得した気持ちがないまぜになった感情が起こりました。ただ、不思議と怒りなどの負の感情はなく、それだけ自分がこの講座や訓練に真剣に打ち込んでいるのだと再確認できました。
【体験談】
以前の自分と比較して、他者と満遍なくコミュニケーションをとることが増えたことで、集団の中にいることに慣れてきたと思っています。まだ完全に緊張感は取れていないですが、確実に慣れてきています。
そして、自分を見つめ直すことも増えたかなと思います。
そうすることで少しでも自分を楽にすることができることが分かってきたので、今後ももっと見つめ直す時間を増やしていこうと思いました。
生活リズムが安定した
【体験談】
就労移行支援事業所を利用するまでは、半引きこもりのような生活を送っていました。利用後は、訓練を通して規則正しい生活習慣が身につき、体調も安定して通所が出来るようになりました。就職にも前向きに考えられるようになり、就活にも積極的になりました。
【体験談】
就労移行支援事業所での訓練を通して、体調の変化に対処しながら働くことを苦手としていたことに気づけた。現在も訓練中だが、講師・スタッフの方と体調について相談しながら訓練に取り組めている。
就労移行支援を受けるデメリット
就労移行支援事業所を利用して不満に感じることがあったと感じている人は全体の47.6%(どちらでもないを含む)でした。
具体的に利用して不満に感じることがあった点について体験談ベースで紹介します。
サポートが不足していた
【体験談】
以前通っていたところは、就活に至るまでの期間が長すぎた。個人的には利用開始から一か月程度ですぐ就活でもよいのではないかと感じる。
【体験談】
上司含めスタッフの方もとても優しいがあまりにも優しすぎてまるで支援というより介護だった。就職を目指す場所なのだから、相手が障害者だとしても言うべきことははっきりと言うのがその人のためにもなるのではないかと思った。
【体験談】
言葉を尽くし、最後には担当医に会ってもらったにも関わらず、利用をやめるまで障害特性からくる深刻なしんどさを理解してもらえず、寛解しかけていたうつが悪化した。(不満事項は全てKaienのことではないです)
利用料金を工面するのが大変だった
【体験談】
自分の場合、不満というほどではありませんが、利用料金の工面が大変な状況です。前職の収入が一定額以上あったため、月9300円の利用料が発生しております。
前職の収入が一定額以上のため、働かなくても保険料・年金・住民税も高額であり、貯金を切り崩しております。
それ以外の部分については、Kaienの利用に大変満足しております。
環境が整っていなかった
【体験談】
スタッフの数が不足しているのか、なかなか対応してもらえないことがある(一人で何人も担当している上に、新入生や修了者の対応もあって忙しそう)。事業所も広さに比して利用者の人数が多くて気を遣うことが多い(例えばデスク同士の間隔が狭くて通りづらい)。Kaien特有の問題とは限らないが、経営効率化のしわ寄せが最終的には利用者に行く(現場も板挟みになって疲弊しているかもしれない)ことを理解してほしい。こちらも過剰な要求はしないように努めるが、期限がある訓練なので何でも我慢するというわけにもいかない。
長期間事業所に通うのがしんどかった
【体験談】
通所時間が非常に長く大変である点とそれに伴って出費も嵩むのが目下の悩みです。
就労移行支援に関する質問
就労移行支援に関するよくある質問をまとめました。
- 就労移行支援と就労継続支援A型・B型の違い
- 就労移行支援とハローワークの違い
- 就労移行支援は1日いくらかかりますか?
- 就労移行支援は障害者手帳の有無に関わらず利用できる?
就労移行支援と就労継続支援A型・B型の違い
先述したとおり、就労移行支援と就労継続支援A型・B型は利用する目的と段階・ケースが異なります。
サービスの種類 | 利用の目的 | 利用の段階・ケース |
---|---|---|
就労移行支援 | 就労するために必要なスキルを身につける、適性を知る | 就労前の準備期間 就労時の就職活動期間 |
就労継続支援A型・B型 | 就労の機会の提供企業への就職へのスキルを身につける訓練の提供 | 一般企業での就労が困難であると本人と支援者で判断した場合に利用する |
就労移行支援とハローワークの違い
就労移行支援とハローワークの大きな違いは利用者層と支援内容です。
就労移行支援は、障害・難病がある人向けの障害福祉サービスです。
ハローワークのような求人の紹介・就職活動支援だけではなく、就労に関連する生活的な支援や就労後の定着支援を受けられるのが特徴です。
サービスの種類 | 特徴 |
---|---|
就労移行支援 | 障害や難病がある人が受けられる障害福祉サービス |
ハローワーク | 障害の有無に関わらず受けられる求人紹介・就職活動支援サービス |
就労移行支援は1日いくらかかりますか?
就労移行支援の利用料金は、利用者1人につき1日1万円前後です。
ただし、利用料金には国や市町村が負担する金額も含まれています。
利用者の利用負担は1割前後なので、月20日間利用した場合は、月に1〜2万円程度かかります。
前述の「負担上限月額」が0円の場合は、無料(自己負担なし)で利用できます。
就労移行支援は障害者手帳の有無に関わらず利用できる?
就労移行支援は、障害者手帳の有無に関わらず利用できます。
ただし、障害者手帳の有無と関係なく、「障害者福祉サービス受給者証」が必要です。
障害者福祉サービス受給者証は、障害福祉に関するさまざまなサービスを受ける際に必要な認定証です。
参考になる例(東京都千代田区):千代田区ホームページ – 障害者福祉サービス(受給者証の発行)
就労移行支援を利用する際に給料は支払われますか?
就労移行支援を利用しても、給与や工賃は支給されません。
就労移行支援は、障害のある方への就労へのサポートを行う障害福祉サービスであり、あくまで職業訓練として通所しているためです。
まとめ
この記事では、就労移行支援について詳しく解説しました。
- 就労移行支援は、障害福祉サービスの一つ
- 就労移行支援は、自身の特性理解や、生活リズムの改善などにおいて利用して良かったと感じている人が多い
- 就労移行支援は、障害者手帳の有無に関わらず利用ができる
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