就労定着支援は、就労移行支援のなかでの就職後の定着をサポートする支援です。
就職や配属が決まったあとに、規則正しく出勤し、長く続けることを目的としています。
この記事では、就労定着支援について以下のことについて簡単にわかりやすく解説しています。
- 就労定着支援の対象者・利用期間・利用料金
- 就労定着支援の具体的な支援内容
- 就労定着支援と就労移行支援・就労継続支援の違い
「就労定着支援で具体的に何を行っているか知りたい」という方は、ぜひ参考にして下さい。
目次
就労定着支援事業とは
就労移行支援とは、平成 18(2006)年の障害者総合支援法と同時に定められた「障害福祉サービス」の就労支援の種類のうちの一つです。
就労支援では、就職・定着・生活の3段階にわけて支援を行います。
就労定着支援は、そのなかの就職後の定着をサポートする支援です。
就職や配属が決まったあとに、規則正しく出勤し、長く続けることを目的としています。
就労移行支援を利用して就職した後の6ヶ月間は、就労移行支援事業所で就労定着支援のサービスを利用することができます。
就労移行支援と就労定着支援やその他の支援との違い
先述した就労支援のサービスと関わる段階の違いについて説明します。
種類 | 関わる段階と内容 |
---|---|
就労移行支援 | 就労前に自身の適職を探したり、課題を確認するサービス就職活動時に実習を通して職業適性などを見極め、特性にあった職業に出会うためのサービス就職後も半年後は定着支援も受けられる |
就労定着支援 | 就労時に本人と職場が続けやすい環境に整えるためのサービス |
就労継続支援A型・B型 | 一般企業での就労が難しいと本人と支援者で判断した際に自身にあった働き方を見つけるために就労訓練などを受けるサービス |
自立訓練(生活訓練) | 障害のある方が自立した生活を送れるよう、ライフスキル、人との付き合い方や就職など社会参加について、トレーニングや相談、助言といった支援を提供するサービス |
障害者就業・生活支援センター | 障害者就業・生活支援センターとは、障害のある方が就労面や生活面について気軽に相談できる福祉施設。主に障害のある方の雇用促進や就労の安定を目的としています。 |
就労定着支援の期間と対象者
就労定着支援の支援期間は最大3年6ヶ月です。
先述したとおり、就労移行支援のプログラムのなかに組み込まれている場合は、6ヶ月間就労定着支援を行います。
その後も、職場の定着への困りごとがあると本人と支援者が判断した場合は、就労定着支援を最大3年間受けられます。
ただし、6ヶ月間就労定着支援を利用する事業所と、その後3年間利用する事業所は異なる可能性があります。
就労定着支援の対象者は、就労移行支援事業所を利用している人もしくは、就労系障害福祉サービスを利用して一般就労し、6ヶ月が経過している人が対象です。
就労定着支援の利用料金
就労定着支援の利用料金は、利用する期間によって異なります。
先述した就労移行支援で就職してからの6ヶ月の定着支援は利用料金が発生しません。
その後の3年間利用する場合、本人と配偶者の世帯収入によって利用料金が発生する場合があります。
利用料金は、月の利用回数×利用する単価で決まります。
ただし、前年の収入状況において「負担上限月額」が決まっています。
世帯の収入状況 | 負担上限月額 | 補足 |
---|---|---|
生活保護受給世帯 | 0円 | – |
低所得世帯 | 0円 | 3人世帯で障害基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象 |
市町村民税課税世帯 | 9,300円 | 収入が概ね670万円以下の世帯が対象入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合「上記以外」に含まれる |
上記以外 | 37,200円 | – |
就労定着支援の具体的な支援内容について
就労定着支援の具体的な支援内容について紹介します。
- 就職後、本人・企業・支援者の三者で定期的に相談する
- 休憩時間の調整を行う
- 支援内容をレポートにして本人と企業と共有する
参考:「発達障害の人の「就労支援」がわかる本 (健康ライブラリースペシャル) 」
就職後、本人・企業・支援者の三者で定期的に相談する
就職後も本人・企業・支援者の三者で定期的に相談を行い、職場環境についての評価や調整を行います。
定期的に相談を行うことで、障害の特性への理解が深まり、本人にあった働き方へ再調整しやすくなります。
休憩時間の調整を行う
障害の特性によっては、休憩時間の取り方を調整する場合もあります。
休憩中にして良いこと、してはいけないことを再確認したり、休憩をとるタイミング、休憩時間の長さ等について確認、調整を行います。
休憩を安定してとれるようになることで、安定して働くことにもつながります。
支援内容をレポートにして本人と企業と共有する
以下のような内容を支援者が当事者にヒアリングしてシートに記入し、本人・企業・支援者で情報共有をします。
1つめの定期的な相談の際に、参考にする内容として使う場合もあります。
【記入する項目の例】
- 体調 睡眠・食欲・疲労
- 前回の相談時からの変化
- 職場・生活面
- 業務 うまくいっていること
- うまくいっていない・困っていること
支援レポートがどういったものか?を詳しく知りたい方は、以下の厚生労働省の支援レポート様式も参考にしてみてください。
就労定着支援の具体的な支援内容の例
ここからは、実際に就労移行支援を利用している方の支援内容の例を困りごととあわせて紹介します。
今後、「就労定着支援を受けようか迷っている…」「具体的にどんな支援内容を行なってくれているか知りたい」という方は、ぜひ参考にしてください。
Aさんのケース(IT職・入社1年目)
【困りごと】
- 職場でのコミュニケーションの取り方について苦手意識があり、適切にコミュニケーションができているか不安を感じていた
- 就労をするのはこの会社が初めてで、自分が会社や上司の期待通りに仕事ができているかがわからず不安を感じていた
【実際に受けた支援内容】
- 毎月定期的に就労定着支援の支援者と面談を行い、職場でのコミュニケーションで気になったできごとを支援者と一緒に確認。コミュニケーション方法が適切であったか、改善すべきことがあるかを振り返り、次に活かすようにした。
- 就労定着支援の支援員が上司と面談し、Aさんの職場での状況をヒアリング。会社の期待通りに仕事ができていることをAさん自身にも報告することで、安心することができた。
Bさんのケース(事務職・入社2年目)
【困りごと】
- Bさん自身は「問題なく仕事ができている」と感じていたが、会社の上司はBさんの業務成果や業務態度に課題を感じていた。(業務中にウトウトしていることがある、成果物にミスが多いなど。)Bさん自身は、客観視が苦手ということを自覚していなかった。
- 「このままでは契約更新ができなってしまう…」と上司は懸念していたが、頑張ってくれているBさんを傷つけてしまうのではと心配して、なかなか仕事上の指摘事項を伝えることができずにいた。
【実際に受けた支援内容】
- 就労定着支援の支援員が上司から、Bさんの現状の課題点や良い点をヒアリング。そのうえで、「障害特性上どうしても改善が難しいこと」「Bさんの心がけ次第で改善できること」「具体的な対処方法を伝えれば改善できること」に仕分けした。
- 改善できるものについては、就労定着支援の支援員も同席したうえで上司からBさんに改善策も含めてフィードバック。支援員が同席していることでBさんも安心して指摘事項を聞くことができ、改善に向けて対処することができるようになった。
就労定着支援に関するよくある質問
就労定着支援に関するよくある質問について紹介します。
就労定着支援の終了後はどうなりますか?期間の延長はできますか?
就労定着支援は、利用期間(最大3年6ヶ月後)後にも、引き続き支援が必要であると支援者が判断した場合は継続が可能です。
継続が決定した際には、障害就業・生活支援センターから支援を受けます。
就労定着支援を受ける際は「障害福祉サービス受給者証」は必要ですか?
就労定着支援を受ける際は、「障害福祉サービス受給者証」が必要です。
ご本人からお住まいの自治体に申請する必要があります。
まとめ
この記事では、就労定着支援について詳しく解説しました。
- 就労定着支援は、就職後の定着のサポートを行う福祉サービス
- 就労移行支援から就職した場合、その後6ヶ月間就労定着支援のサービスも含まれている
- 就労定着支援の利用料金は、利用する期間によって異なる
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